最新記事

北朝鮮

北朝鮮外務次官訪中を読み解く――北朝鮮の狙いと中国の思惑

2017年3月1日(水)17時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

平壌、北朝鮮国旗 David Gray-REUTERS

28日、北朝鮮外務次官が訪中した。同日、中国の楊潔チ国務委員とトランプ大統領が会談。THAADの韓国配備予定地の承認も進み、3月1日からは米韓軍事演習が始まる。最も見落としてならないのは北朝鮮代表団のマレーシア入りか。

北朝鮮の李吉成(イ・キルソン)外務次官訪中

2月28日、北朝鮮の李吉成(イ・キルソン)外務次官を団長とする北朝鮮の外務省代表団が北京に到着した。3月4日まで滞在し、王毅外相(外交部長)や劉振民外務次官(副部長)、孔鉉佑外務次官補(部長助理)とも会談する。

中国の中央テレビ局CCTVが外交部の耿爽報道官の言葉として報道した。それによれば、双方は中朝関係と共通の関心事である国際問題や地域の問題に関して意見を交わすという。(なお、日本では「李吉聖(リ・ギルソン)」と表記されているが、中国ではすべて「李吉成(Li Jicheng)」と表記されており、中国の報道から情報を得ているので、中国の表記に従う。中国国際放送の日本語版にも「李吉成(イ・キルソン)」とある。)

中朝は金正恩政権と習近平政権誕生以来、ただの一度も首脳会談を行っていない。ましてや今般の金正男(キム・ジョンナム)殺害事件があってからというもの、中国は北朝鮮側にもマレーシア側にも立たないという立場を貫いている。

そのような中、なぜ中国は北朝鮮が外務次官の訪中を受け入れたのか?

北朝鮮高官の訪中は昨年5月のイ・スヨン朝鮮労働党副委員長以来で、9か月ぶり。

では、まず今般の中国側の思惑を読み解こう。

THAADを配備すれば、戦争になるぞ!

アメリカは、韓国に配備するTHAAD(高高度迎撃ミサイル)の設置予定地をロッテグループが所有する星州ゴルフ場として交渉を進めてきた。この交渉が、北朝鮮外務次官訪中と同じ日の2月28日、最終段階に入った。韓国国防部とロッテ側が予定地に関して契約書に署名することになったのだという。

ロッテの所有する土地がTHAAD配備予定地として挙げられて以来、中国では激しい韓国排斥運動が展開されており、特にロッテ製品に対する不買運動や中国における運営妨害があからさまに展開されている。

2月19日の「金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材」にも書いたように、中国政府関係者は「韓国ほど信用できない国はない!」と吐き捨てるように言ったことからも分かるように、韓国を嫌悪する国民感情はこれまでになく激しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中