教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援
プランの協力団体の一つ「カンボジア飢えと暴力から子どもたちを守る会(CCASVA)」のフォ・ソフォーンはこうした活動を13のコミュニティで展開している。
ソフォーンが支援しているスレイ・ニア(16)の家族も、1年のうち農作業がある時期以外の8カ月はタイに出稼ぎに行く。当初、彼女も兄(24)や姉(22)とともに一緒にタイに連れて行かれていた。だが、10年ほど前にソフォーンらが「子どもをカンボジアに残し、教育を受けさせるよう」に両親を説得。叔母の家に預けられたニアは、現在高校生だ。
「学校にいる先輩たちを見て、出稼ぎに行かなくてもいろいろな職業に就けることを知り、刺激を受けた。私は将来、保健センターで働き、予防医療に携わる看護師になりたいと思っている」
ニアの姉は12歳までは両親に同行してタイにいたが、プランの説得でカンボジアに残り、一時は学校にも行くようになった。だが、学校に戻った年齢が高すぎたためか、学校になじめず行けなくなってしまった。今は家事と残された家畜の世話や農作業に従事している。
姉妹でありながら、たまたまカンボジアに残った年齢の差で姉と妹の進路はくっきりと分かれてしまった。筆者の目を正面から見据えて一言一言しっかり自分の考えを話す妹に対して、姉は幼く見えた。自信がないからか視線が定まらず、消え入りそうな声で話す。「できればタイの両親のもとに戻りたい」。彼女の未来には出稼ぎ中の両親のもとで暮らす、ということがささやかな希望なのだ。
教育を受ける効果は単に読み書きができるようになり、知識を得ることだけではない。学校に行かなければ自分の両親の生き方しか知り得ない。選び取れない。出稼ぎ先で待っているのは、稲作や果樹園での下働きや建設労働などだ。それでも故郷で農業に就くよりは収入が高いため、子の世代もまた出稼ぎに行く。その循環を断ち切ることができるのは、唯一、教育だけなのだ。
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出稼ぎで不在の親に代わって子どもたちたちをサポートするのが村のリーダーたちだ。前述のCCASVAのような団体はリーダーたちの育成も担っている。そうした一人、1993年からスレ・プラン村のリーダーを務めるペム・ライを訪ねた。この村では146世帯のうち67世帯が子どもを残して出稼ぎ中だという。
「出生届や結婚届の受理やインフラの整備など従来の仕事に加え、今では祖父母に預けられた子どもたちを学校に通わせ、病気のときは病院に連れて行く。長く続いた内戦のせいで祖父母世代は十分な教育を受けていない。その世代に教育の重要性を説くことも仕事のひとつだ」