歯磨きから女性性器切除まで、世界の貧困解決のカギは「女性の自立」にある
© Smile Squared/Stephanie Bosch(『WOMEN EMPOWERMENT 100』より)
<女性をエンパワーすることが貧困の削減につながると、『WOMEN EMPOWERMENT 100』の著者で活動家のベッツィ・トイチュは言う。驚きに満ちた100種類にも上るその具体的な方法とは?>
日本のニュースであれ海外のニュースであれ、最近は「貧困」という言葉を目にしない日はないと言ってもいいかもしれない。そのくらい貧困は大きな社会問題であり、特に国際的な諸問題の根っこには、貧困が横たわっていることが多い。では、どうすれば貧困を減らせるのか。そのカギは「女性」にあると、ベッツィ・トイチュは言う。
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トイチュはずっと芸術家だった。ボランティアや国際協力とは一切関係なく、40年間、本人曰く「安全な地」で暮らしてきた。だがある日、インターネットを通じて、世界をより良くするために活動する人々とつながるようになる。そうして彼女は、自らも環境と貧困の問題に取り組む組織に参加し、活動するようになった。
その傍ら、トイチュは世界中で実践されている取り組みをひとつずつ拾い集め、SNS上にまとめていった。その集大成が、8月末刊行の新刊『WOMEN EMPOWERMENT 100――世界の女性をエンパワーする100の方法』(筆者訳、英治出版)に掲載された100のアイデアだ。この100のアイデアはいずれも――ひとつ残らず、すべてだ――貧困に苦しむ女性たちのエンパワーメント(自立や発展に必要な力をつけること)を目的としている。
女性をエンパワーすることが、どうして貧困削減につながるのだろうか。この疑問に、今では女性のエンパワーメントの啓発活動家であるトイチュはこのように答えている。「女の子が教育を受ければ、結婚や出産の時期が遅くなり、若い女性はより高い技能を要する仕事に就けるようになります。女性は家族のために収入を投資する傾向が男性よりも強いので、女性の収入が上がれば、開発が促進されるというわけです」
歯を磨く習慣が定着すれば自立につながる
女性の自立を支援するアイデアの中には、歯磨きのように、私たちが日常生活でごく当たり前におこなっている行為も含まれている。そんなことで貧困が軽減できるのか、と思われるかもしれないが、昔よりも手軽に買える安価なジャンクフードが出回るようになった開発途上国で、虫歯は深刻な問題だ。
歯が悪ければ、ものが食べにくい、勉強にも集中できない。僻地の村では歯科医がいなくて治療もできない、あるいは、いても治療に払える金がない。歯を磨く習慣が定着して虫歯が減れば、こうした問題が解消できるというわけだ。
一方で、女性性器切除の慣習を撲滅するというアイデアもある。こちらは逆に、日本で暮らす私たちにはまったくなじみがない。だが世界にはいまだに、幼い娘の女性性器の一部を切り取るというこの慣習が根強く残っている地域がある。そして、切除の際の処置が悪かったために感染症にかかって命を落とす少女も少なくない。命を落とすことがなくても、麻酔もかけずに体のもっともデリケートな部分を傷つけられたというトラウマは、一生涯残るものだ。
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このほかにも本書には、ゴミとして捨てられたペットボトルで家や照明を作るといった、資源不足とゴミ問題を一挙に解決できるような、目から鱗のアイデアも数多く掲載されている。「女性をエンパワーすることで貧困を減らす」――そのための方法がこれほど多種多様に存在するのかと驚かされる。