最新記事

米中関係

「トランプ・習近平」電話会談は、なぜ安倍首相訪米に合わせたのか?

2017年2月13日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国台湾網の報道とトランプ大統領の返礼書簡は同じ日!

中国台湾網は親中派(「一つの中国」派)の台湾の「中央社」が発表した2月9日の情報をもとにしている。そして同じ2月9日にネット報道した。それはなぜ、トランプ大統領が習近平国家主席に返礼の書簡を送った日と一致しているのか?

2月5日付の本コラム<マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の威力>で、CCTVがキッシンジャー氏を取材して、無理やり「一つの中国」原則を守るべきと言わせていたことを書いたが、この前後ではまだ米中の水面下での激しい攻防戦が続いていたものと考えられる。

そして安倍首相訪米の2月9日にようやく漕ぎ着けケリを付けた。だから親中派の台湾メディアに公開させ、書簡を送った。

中国としては日本にクギを刺しておきたかったし、アメリカは前述のような思惑を抱いていた。だから2月9日でなければならなかったし、米中首脳電話会談もまた、安倍首相がワシントンに着く2月10日でなければならなかった。こういうことではないのか。

「一つの中国」原則を取引に?

中国は「"一つの中国"原則は中国の神聖なる核心的利益で、それをビジネス交渉になど使うことは許されない!」と声高に言っていたが、何のことはない、中国の方から「取引」に使ったといいうことになろう。これさえ守れば、ビジネス交渉には応じると。

トランプ大統領は「習近平国家主席の要望に応じて」という言葉を使っている。

安倍首相訪米の時期を選んだのは、米中双方の思惑が一致したためだとしか言いようがない。

それでもなお、大統領令で苦境に立たされていたトランプ大統領にとって、批判の目を逸らすという意味でも、また同盟国とこんなに仲がいいのだということを世界に見せつけるためにも、安倍首相の訪米は天から降ってきたプレゼントのように、ありがたかったことだろう。二人の相性は良さそうだ。日米同盟の強固さをアピールしたのも大きい。

しかし「ビジネス」のためなら、どんなことでもする、したたかな相手であることを、肝に銘じておいた方がいいだろう。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中