最新記事

米中関係

「トランプ・習近平」電話会談は、なぜ安倍首相訪米に合わせたのか?

2017年2月13日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ大統領は、その「身体検査」をしたのか否か。した上で、そして「知った上で」シュワルツマン氏を大統領戦略政策フォーラムの議長にしたのだとすれば、なかなかの「やり手」ではないか。フォーラムのメンバーをこの二人で選んだということは、親中派の米財界人を揃えたことにもなろう。

「一つの中国」のために答弁していた米財界人――なんと、ティラーソン国務長官!


中国台湾網は2月9日、「米新任国務長官、一つの中国政策を維持すると表明」というタイトルで、ティラーソン国務長官が就任前に書面で回答した内容を報道した。

中国台湾網によれば、ティラーソン氏が正式に国務長官に就任する前に、米上院外交委員会のカーディン上院議員(民主党)から書面による質問を受けていた。質問状には「あなたはアメリカの"一つの中国"政策や "(一つの中国を基本合意とした)米中間の3つの共同コミュニケ"に対して、どう思っているのか?これは相変わらず米中関係の基礎だと思っているのか、それとも"一つの中国"という概念は修正される必要があると思っているのか?」といった趣旨のことが書かれていた(「3つの共同コミュニケ」に関しては2016年12月13日付の本コラム<トランプ氏「一つの中国」疑問視に中国猛反発>に詳述)。

それに対してティラーソン氏は、やはり書面で「"米中3つの共同コミュニケ"等の内容は米中関係の基礎で、アメリカは"一つの中国"政策を継続的に維持していかなければならない。この政策の下で、アメリカは中華人民共和国を唯一の合法的な政府と認め、台湾は中国の一部であるという、中国の台湾に対する立場を承認する」という旨の回答を提出していたという。

ティラーソン国務長官に関しては2月3日の本コラム「トランプ人事は中国を封じ込められるか?――ティラーソン国務長官就任」で書いたように、プーチン大統領と仲がいい、ロシア寄りの米財界人の一人だが、中国にもロシアとほぼ同額の投資をして、1300人の中国人を雇用している。

このティラーソン国務長官は、今ではエクソンモービルのCEOを退いてはいるが、結局は「大統領戦略政策フォーラム」や「清華大学経済管理学院顧問委員会」などに名を連ねる米財界人の仲間。

彼らはこぞって中国と「金」でつながっているのだ。

アメリカに溢れているチャイナロビーだけでなく、中国と深くつながる巨大米財界人が国務長官や「大統領戦略政策フォーラム」の頭脳としてトランプ大統領の周りを囲んでいるのだとすれば、トランプ氏が大統領選で言っていた「中国からの輸入品には45%の関税をかける」などという批判は、「一つの中国」政策とバーターで取引され、大方の解決を見ているものと考えていいだろう。だからこそ、トランプ大統領は習近平国家主席と電話会談をした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中