トランプ大統領への「手土産」日米雇用イニシアチブ、どこまで有効か
2月8日、今週末に予定されている日米首脳会談で日本側が提案を模索している「日米成長雇用イニシアチブ」について、トランプ米大統領(写真)による円安誘導や対日赤字への批判をかわす外交カードになり得るとの見方が市場関係者から出ている。アリゾナ州で昨年8月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)
今週末に予定されている日米首脳会談で日本側が提案を模索している「日米成長雇用イニシアチブ」について、トランプ米大統領による円安誘導や対日赤字への批判をかわす外交カードになり得るとの見方が市場関係者から出ている。インフラ投資の経済効果自体は限定的との見方が強まっているものの、支援申し出にトランプ大統領がどのような反応を示すのか注目される。
円安・貿易赤字批判、回避できれば目的達成か
「日本のイニシアチブ提案の目的は、対日圧力緩和に向けて外交的気合を示す意味に尽きる」──。
日興アセットマネジメント・チーフストラテジストの神山直樹氏は、こう指摘する。トランプ大統領が安倍晋三首相とのゴルフに「グレート」との感想を漏らせば、ドル高圧力が期待できそうであり、対日圧力も和らぐとの見立てだ。
日本政府としては、トランプ大統領が雇用を優先課題に掲げる中、首脳会談に向けて米国のインフラ投資活性化などを通じ、日米連携で数十万人規模の雇用増につなげるプランを提示する方向で最終調整中とみられる。
JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏は「インフラ需要に応えるような大規模な資金支援を提示することで、トランプ大統領からの円安是正・貿易不均衡への圧力を止められるかもしれない」と指摘する。
また、野村総合研究所・金融ITイノベーション研究部長・井上哲也氏も、トランプ大統領の不満が噴出するのを回避するためには「米側に歓迎される有効なパッケージを提示するしかない」とみている。
インフラ整備には巨額の資金が必要だが、連邦財政が赤字である米国にとって、資金的裏付けは欠かせないポイントになる。この部分を日本からの資金でファイナンスする構想を提示すれば、インフラ整備の直接的効果に加え、資金面でのサポートもアピールできると、日米交渉に詳しい複数の関係者は指摘する。
インフラ投資、吉野ADBI所長から新提案
ただ、日本からの資金を活用する場合、水道事業や橋梁、道路事業などでは高い収益性が見込めず、民間資金が流入するのは難しいとの指摘が市場関係者から出ている。