最新記事

日米関係

トランプ大統領への「手土産」日米雇用イニシアチブ、どこまで有効か

2017年2月8日(水)16時57分

2月8日、今週末に予定されている日米首脳会談で日本側が提案を模索している「日米成長雇用イニシアチブ」について、トランプ米大統領(写真)による円安誘導や対日赤字への批判をかわす外交カードになり得るとの見方が市場関係者から出ている。アリゾナ州で昨年8月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)

今週末に予定されている日米首脳会談で日本側が提案を模索している「日米成長雇用イニシアチブ」について、トランプ米大統領による円安誘導や対日赤字への批判をかわす外交カードになり得るとの見方が市場関係者から出ている。インフラ投資の経済効果自体は限定的との見方が強まっているものの、支援申し出にトランプ大統領がどのような反応を示すのか注目される。

円安・貿易赤字批判、回避できれば目的達成か

「日本のイニシアチブ提案の目的は、対日圧力緩和に向けて外交的気合を示す意味に尽きる」──。

日興アセットマネジメント・チーフストラテジストの神山直樹氏は、こう指摘する。トランプ大統領が安倍晋三首相とのゴルフに「グレート」との感想を漏らせば、ドル高圧力が期待できそうであり、対日圧力も和らぐとの見立てだ。

日本政府としては、トランプ大統領が雇用を優先課題に掲げる中、首脳会談に向けて米国のインフラ投資活性化などを通じ、日米連携で数十万人規模の雇用増につなげるプランを提示する方向で最終調整中とみられる。

JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏は「インフラ需要に応えるような大規模な資金支援を提示することで、トランプ大統領からの円安是正・貿易不均衡への圧力を止められるかもしれない」と指摘する。

また、野村総合研究所・金融ITイノベーション研究部長・井上哲也氏も、トランプ大統領の不満が噴出するのを回避するためには「米側に歓迎される有効なパッケージを提示するしかない」とみている。

インフラ整備には巨額の資金が必要だが、連邦財政が赤字である米国にとって、資金的裏付けは欠かせないポイントになる。この部分を日本からの資金でファイナンスする構想を提示すれば、インフラ整備の直接的効果に加え、資金面でのサポートもアピールできると、日米交渉に詳しい複数の関係者は指摘する。

インフラ投資、吉野ADBI所長から新提案

ただ、日本からの資金を活用する場合、水道事業や橋梁、道路事業などでは高い収益性が見込めず、民間資金が流入するのは難しいとの指摘が市場関係者から出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで6週間ぶり高値、日銀利上

ワールド

ゼレンスキー氏、陸軍司令官を新たに任命 内部改革の

ワールド

ヒズボラ指導者カセム師、停戦履行でレバノン軍との連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 5
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 8
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 9
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 10
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中