最新記事

教育

東大生に育てたいなら、子供を「他人」と思いなさい

2017年2月6日(月)06時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

つまり、他人に接するのと同じように子供にも接するべきということ。他人に対しては失礼にあたるから決して口にしないような言葉も、子供にはつい言ってしまうことがある。その最たる例が「バカ」という言葉だが、案外、子供に言っている親は多いのではないだろうか。深く考えずに「つい」言っているだろうが、そうした何気ない言葉ひとつでも、子供の心には深く根付くのだという。

なぜなら子供には、親のその言葉が「何気ない(=深い意味のない)言葉」ということがわからないからだ。

思わず口から出てしまっただけで、本気でそう思っているわけではない、意味のない冗談であり、その場かぎりのもの。親としては、それくらいの心持ちだろう。だが、それは何十年と生きてきたなかで学び、身につけた感覚であって、まだ生まれて10年かそこらの子供に理解できることではない。

同じような例として著者が挙げているのが、「大したことありません」や「そんなことありません」といった謙遜の言葉だ。(日本人の)大人の世界では決まり文句のようになっていて、「誰かに褒められたら、とりあえず謙遜しておく」という姿勢が暗黙のマナーのように身についている。しかし、そんなことは子供には「理解不能」だと著者は言う。

子供には「子供の世界」がある

自分の子供時代を振り返ってみれば、誰でも「大人ってよくわからない」「なんで大人は○○なんだろう?」と思ったことがあるはずだ。たしかに、大人の世界は子供には理解できない。

一方、子供が大人の世界を理解できないのと同じくらい、実は、大人には見えていない子供の世界がある。学校や塾で自分の子供がどういう日々を送っているのか、完全に把握している親などいない。

どんなに仲良し親子で、毎日たくさんの会話をしていたとしても、子供の24時間をすべて知ることはできない。たとえ一日中そばにいても、その頭の中まではわからない。

だから、親子の会話が大切なのだと著者は言う。それも親が話すのではなく、子供に話させることが重要だ。

ある程度の年齢になれば、とくに男の子は自分の話をしたがらなくなるが、親が何も聞かなければ、ますます子供の世界は遠ざかっていく。このときばかりは他人に対する礼儀(=むやみに深入りしない)はしばし忘れて、親としての"働きかけ"が必要だ。子供がたくさん話してくれるかどうかは、親の「質問力」にかかっているのだ。

もちろん「勉強しなさい」と同じで、「今日は何があったのか?」としつこく聞けば聞くほど、子供は話してくれなくなる。しかし、どういう聞き方をすれば話してくれるかは、子供によって千差万別。重要なのは、自分の子供にはどういう聞き方が適切なのか、だ。

そのために必要なのが、子供を「見る」こと。著者によれば、「見る」「聞く」「話す」のうち子育てでもっとも大切なのは「見る」だという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中