東大生に育てたいなら、子供を「他人」と思いなさい
Yagi-Studio-iStock.
<親が「勉強しろ」と言い続ければ、子供をつぶすことになる!? 自分から勉強する子、頭のいい子に育てるためには子供を「ひとりの人間」として扱うべきだと、教育者であり、東大生と早大生を育て上げた母親でもある楠本佳子氏は言う>
「東大生の親は『勉強しなさい』と言わない」という記事を目にすることがある。この話に驚く人もいれば、「なるほど」と妙に納得する人もいるだろう。あるいは、子供の立場なら「うちの親に聞かせたい」とうらやましく思うかもしれない。
しかし、少しうがった見方をすれば、そもそも子供が自分から進んで勉強をするから、親がわざわざ「勉強しろ」と叱る必要がなかったのでは?という疑問も湧いてくる。親の姿勢が先か、子供の行動が先か――。この疑問に答えてくれる本がある。
岡山県で、口コミだけで生徒を集める学習塾を主宰する楠本佳子氏が書いた『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)だ。著者は、家庭教師歴15年、塾講師歴4年という教育者であり、東大生と早大生の2人の子供を育て上げた母親でもある。
本書は、教育者としての子育て論というよりも、教育者でもあるひとりの母親の子育て論といったほうが近い。子供の学習に詳しい著者が、あくまで母親の視点から語っているのが特徴だ。
「自分から勉強する子に育てたい」、もっとストレートに言えば「頭のいい子に育てたい」というニーズは高いようで、多くの類書が出ているが、本書が他と違っている点はそのタイトルにも表れている。それが「お母さんの習慣」だ。「子供に身につけさせる習慣」ではない。
子供が自分から進んで勉強し、その結果としてどんどん伸びていくようにするには、親がどういう姿勢で子育てをすればいいのか、というのが本書の主旨だ。
冒頭の疑問については、どちらが先かということではなく、いずれにしても「親次第」という結論になるだろう。
親が口うるさく「勉強しろ」と言い続けることは、子供を"つぶす"ことにつながる。その一方で、自分から勉強するような子供であったとしても、親の接し方次第ではやる気を失う可能性があり、また、どこかの時点で伸び悩むことにもなるという。著者いわく、「子供を伸ばすのは親、つぶすのも親」なのだ。
子供には理解不能な「大人の世界」
「ああしろ」「こうしろ」と口うるさく指図されると、誰でも苦痛を感じ、かえってやる気を失くしてしまう。そのことは自分自身に置き換えてみればよくわかる。だから子供に対しても、そういう接し方をしてはいけない。
親が「勉強しろ」と言うことが、子供からやる気を奪う最大の要因となる......。頭では理解できても、なかなか実行できないのが悩みではないだろうか。
そこで著者がくり返し述べているのは、子供も「ひとりの人間」だということ。とかく親というのは、無意識のうちに子供に自分自身を重ねたり、自分と同一視したりする傾向がある。文字どおり「自分の体から」産んだ母親なら、それも当然と言えるのかもしれない。しかし、いくら自分の遺伝子を受け継いでいたとしても、子供は親とは別の人格をもった「別の人間」だ。