潘基文、電撃会見で大統領選不出馬を宣言 韓国政界混迷深まる
韓国に1月12日に帰国してから、パン・ギムンは政界の重鎮たちへの挨拶回りに奔走した。帰国するまでは、保守陣営の砦として彼にラブコールを送ってきた人たちだったが、その頃には、もはや彼らはパン・ギムンを無視するようになっていた。与党セヌリ党は、パク大統領の権限代行を務めるファン・ギョアン首相も候補の一人と考えるようになってきたからだ。憲法裁判所がパク大統領への弾劾審査の結果を3月中に出すと発表し、選挙戦への時計は加速していくなか、政界ではパン・ギムンだけが疎外されるようになり、支持率の低下が喧伝されるようになった。
また、ノ・テウ政権の外交通商部長官時代に実業家から裏金を受け取ったという疑惑が報道されたり、実弟が贈賄を試みたとしてアメリカで起訴されるなどスキャンダルが起きたこと、また国連事務総長時代に日本との慰安婦合意に関して「歓迎する」と発言したことについてメディアから追求されたことなども支持率低下に拍車がかかったと見られる。
前日夜、誰にも相談することなく出馬取り止めの原稿を書いたパン・ギムンは、電撃的な記者会見を終えて、陣営の参謀にこう語ったという。
「票を稼ぐためには、自分は保守だと明言すべきだ、と何度も言われた。これはつまり保守政党の消耗品になれということだ。しかし、保守のためにだけ働くような人に大統領になる資格はない。私は保守だがそんな話は、私の良心が許せなかった」
救国の士を目指した前国連事務総長は、日本とのパイプももつ数少ない大統領候補だったが、本格的な選挙戦に突入することすらないまま、表舞台から降りていこうとしている。