トランプ時代に『24』が帰ってきた
『レガシー』では、拷問は悪玉の側が行う。少なくとも序盤の段階では、CTUは拷問に手を染めない。CTUは、令状なしにすべての電話通話記録と監視カメラのデータを入手することが可能だ。わざわざ拷問を行う必要などないのだ。
カーターと家族にも魔の手が迫る。カーターは元上司のレベッカ・イングラム(ミランダ・オットー)と共に、テロ組織が探している金庫を見つけるという非公式のミッションに乗り出すことになる。こうして2人の戦いと冒険が始まる。
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もっとも、(好みは分かれるにせよ)視聴者にパニックを感じさせることに成功していた『24』ほどの緊迫感はない。視聴者は胸をドキドキさせるより、ドラマに込められた政治的メッセージをどう受け止めるべきかで頭を悩ますかもしれない。
イスラム教徒がアメリカ本土でテロを起こすという不安をしきりにあおってはいるが、カーターたちがあぶり出そうとする米国内のテロ分子は、難民に成り済まして入国するわけではない。こうした「悪い奴ら」はいかがわしい武器商人兼人身売買人の助けを借りて入国する。
しかも、『24』がイスラム教徒たたきと批判されたことを意識したのか、『レガシー』で最もクローズアップされるテロ分子は、2人のチェチェン人と金髪の科学教師だ。
それだけではない。『レガシー』の設定にはリベラルな側面もある。何より、主人公のカーターが黒人だ。テロリストをやっつけるスーパーヒーローは、白人から黒人に交代したことになる。しかもカーターの妻は、いつも頼りなく助けを求めてばかりいたジャックの妻とは雲泥の差の有能な女性だ。
第2話で200万ドルが至急必要になったカーターは、警察に潜入して金を盗もうと考える。そのために、わざと警察に逮捕されるという計画を立てた。
そんなことが実際に可能なのかと案じるイングラムに、カーターはあっさり言う。「俺みたいな黒人が街角に立っていれば、そんなのは簡単だ」。そして実際、人種差別的な警官によってたちまち連行される。
反移民的なメッセージと人権意識の高いメッセージがうまく共存できるといいが。
<放送情報>
「24:レガシー」
FOXチャンネルにて毎週火曜よる9時放送中
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