最新記事

ドラマ

トランプ時代に『24』が帰ってきた

2017年2月28日(火)10時50分
ウィラ・パスキン

『レガシー』では、拷問は悪玉の側が行う。少なくとも序盤の段階では、CTUは拷問に手を染めない。CTUは、令状なしにすべての電話通話記録と監視カメラのデータを入手することが可能だ。わざわざ拷問を行う必要などないのだ。

カーターと家族にも魔の手が迫る。カーターは元上司のレベッカ・イングラム(ミランダ・オットー)と共に、テロ組織が探している金庫を見つけるという非公式のミッションに乗り出すことになる。こうして2人の戦いと冒険が始まる。

24legacy02.jpg

イングラム(右)は元部下のカーターと共にテロリストとの戦いへ臨む (c) 2017 Fox and its related entities. All rights reserved.

【参考記事】『ラ・ラ・ランド』の色鮮やかな魔法にかけられて

もっとも、(好みは分かれるにせよ)視聴者にパニックを感じさせることに成功していた『24』ほどの緊迫感はない。視聴者は胸をドキドキさせるより、ドラマに込められた政治的メッセージをどう受け止めるべきかで頭を悩ますかもしれない。

イスラム教徒がアメリカ本土でテロを起こすという不安をしきりにあおってはいるが、カーターたちがあぶり出そうとする米国内のテロ分子は、難民に成り済まして入国するわけではない。こうした「悪い奴ら」はいかがわしい武器商人兼人身売買人の助けを借りて入国する。

しかも、『24』がイスラム教徒たたきと批判されたことを意識したのか、『レガシー』で最もクローズアップされるテロ分子は、2人のチェチェン人と金髪の科学教師だ。

それだけではない。『レガシー』の設定にはリベラルな側面もある。何より、主人公のカーターが黒人だ。テロリストをやっつけるスーパーヒーローは、白人から黒人に交代したことになる。しかもカーターの妻は、いつも頼りなく助けを求めてばかりいたジャックの妻とは雲泥の差の有能な女性だ。

第2話で200万ドルが至急必要になったカーターは、警察に潜入して金を盗もうと考える。そのために、わざと警察に逮捕されるという計画を立てた。

そんなことが実際に可能なのかと案じるイングラムに、カーターはあっさり言う。「俺みたいな黒人が街角に立っていれば、そんなのは簡単だ」。そして実際、人種差別的な警官によってたちまち連行される。

反移民的なメッセージと人権意識の高いメッセージがうまく共存できるといいが。

<放送情報>

fox-logo.jpg

「24:レガシー」
FOXチャンネルにて毎週火曜よる9時放送中

© 2017, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アジアの信用市場揺らぐ、CDSスプレッド拡大

ビジネス

「FRBプット」当面発動せずか、パウエル議長が様子

ワールド

豪求人広告、3月は前月比0.4%増 労働需要なお健

ビジネス

全9地域が判断据え置き、経済巡り「不確実性」=日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中