「ペンス大統領」の誕生まであと199日?
ペンスがフリンの排除に大きな役割を果たしたという事実は、すでにペンスがトランプに対して自己主張を行っている証拠だろう。どうやらペンスは、アメリカの外交政策が地に堕ち、国家の安全保障が危険にさらされていく様子を、ただ横で眺めているつもりはないようだ。アメリカ国民も、まさにそれを望んでいるはずだ。
【参考記事】「ロシアが禁止ミサイル配備」にも無抵抗、トランプ政権の体たらく
ペンスはエスタブリッシュメント(支配階級)の共和党員で、連邦下院議員として12年の経験を積んできた。連邦下院議員時代の最後の2年間は下院共和党会議議長としてリーダーシップを発揮し、その後、インディアナ州知事になった。
ペンスは真面目で抜け目のない共和党員だ。敬虔なキリスト教徒として、妊娠中絶や同性愛に強く反対し、地球温暖化にも否定的な立場を取ってきた。そうした姿勢はインディアナ州の穏健な共和党支持者に煙たがられた。
ペンスは副大統領の任務の重大さを心得ており、その物腰やボディーランゲージから、トランプの勝手で軽率な行動をしばしば不愉快に感じている様子が見て取れる。
憲法修正第25条第4項で
フリンの問題をめぐっては、共和党のポール・ライアン下院議長とミッチ・マコーネル上院院内総務も真相の追及を後押ししており、本格的な捜査が進むはずだ。共和党上院議員のジョン・コーニン(テキサス州選出)、ロイ・ブラント(ミズーリ州選出)、リンジー・グラハム(サウスカロライナ州選出)、ジョン・マケイン(アリゾナ州選出)も、フリンの公聴会への召喚を求めている。
米大統領就任から史上最も早い段階で(就任から25日)発覚した重大スキャンダルについて、FBIの捜査が進展するにつれて、トランプの辞任や弾劾を求める声が上がるだろう。
ペンスは表向きにはトランプを擁護するという難しい仕事があるが、裏では特に外交や安全保障に絡む問題で、トランプの過激な言動を封じ込める役割を果たしてくれそうだ。
ペンスが置かれた状況は、政治が混乱を極めたリチャード・ニクソン政権で副大統領を務めたジェラルド・フォードと似ている。というのも、もしトランプが衝動的な言動で共和党トップや外交政策エリートを邪魔し続ければ、米議会がトランプに反旗を翻す可能性があるからだ。
たとえトランプが猛烈に反対しても、大統領に職務遂行能力がない場合の手続きを定めた合衆国憲法修正第25条第4項に則り閣僚の過半数が賛成すれば、ペンスは「大統領代理」になれる。これを国民と関わりのない「宮廷革命」と呼ぶ人もいるが、とにかくペンスは、もはや危険すぎてトランプを大統領職に置いておけない証拠を並べ立て、説得力を持って論証できればいい。