最新記事

南スーダン

民族大虐殺迫る南スーダン。国連安保理の武器禁輸措置決議になぜ日本は消極的なのか

2016年12月7日(水)17時45分
伊藤和子(弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長)

Adriane Ohanesian-REUTERS

南スーダンで今何が起きているのか

 自衛隊の派遣をめぐって、様々な問題が日本国内でも議論されている南スーダン。
 しかし、これは国内政治の問題ではなく、現地の人々の命が今この瞬間も奪われている事態であり、そして何より今そこにある危機である。

 1990年代に起きたルワンダの大虐殺、民族浄化、多数の住民が殺され、女性はレイプされるなど、壮絶な悲劇は未だに記憶されている。

 南スーダンでの現在の状況は残念ながら、それに近いのではないか、集団虐殺(ジェノサイド)、民族浄化の危険が待ち構えているのではないか、と国連関係者は警告している。
 日本の報道としては詳しいこちらを引用させていただく。


南スーダンの人権問題を調査する国連の委員会は1日、声明で「飢えや集団強姦、村の焼き打ちといった形で、国内各地で既に民族浄化が進んでいる」と警告し、「国際社会には(大虐殺に発展することを)防ぐ義務がある」と訴えた。

ジュバでは7月に政府軍と反政府勢力の戦闘が発生。最大民族ディンカが他の民族に対する迫害を強めているとされる。

委員会は声明で「多くの村人が奪われた土地を取り戻すために血を流す覚悟があると証言した」として緊張の高まりを指摘。1994年にルワンダで起きたような大虐殺が繰り返される懸念を示した。

国際社会は今後予定されるPKOの増派だけでなく、経済制裁などを強化する必要性があると強調した。委員会は南スーダンでの現地調査を終え、来年3月に国連人権理事会で調査結果を報告する。(共同)

出典:産経新聞 2016.12.02 「南スーダンで民族浄化」、国連委、大虐殺を警告

 これは、2016年3月に、国連人権理事会が設置した、南スーダンの人権に関する委員会(Commission on Human Rights in South Sudan )が、最近10日間の現地調査ミッションを実施した結果を12月1日に発表したものである。

 既に11月17日開催の国連安保理では、国連ジェノサイド防止に関する国連特別代表が、
'all the warning signs' conflict could spiral into genocide"(紛争がジェノサイドへのスパイラルに発展しかねないすべての兆候)を強調していた。

 12月1日の国連専門家の発表では、「国連ジェノサイド防止に関する国連特別代表が述べている通り、ジェノサイドにいたるたくさんの兆候がすでにそこにある、いまそこにある紛争、バラバラな民族的アイデンティティへの帰依、否認の文化、民族の追放、組織的な人権侵害とその計画の兆候・・しかし、重要なのはまだこれを防止できる時間があるということだ」
 と訴える。国際社会には今、民族浄化を防ぐ行動が期待されている。

 南スーダンは12月から乾季を迎える。雨季では十分な戦闘が難しいため、乾季は戦闘シーズンと言われている。時間は限られている。そして、1月になればトランプ政権となり、国連外交の先は全く読めなくなる。。。危険な情勢である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中