最新記事

フィリピン

写真が語る2016年:フィリピン麻薬戦争、夫の亡骸を抱く女

2016年12月28日(水)18時01分

12月7日、フィリピン首都マニラで7月、麻薬密売人の容疑をかけられて殺害された夫を抱きかかえる妻の画像がインターネット上を駆けめぐった。ドゥテルテ比大統領の「麻薬戦争」の暗部を物語る1枚となった(2016年 ロイター/Czar Dancel)

 フィリピン首都マニラで7月、麻薬密売人の容疑をかけられて殺害された夫を抱きかかえる妻の画像がインターネット上を駆けめぐった。ドゥテルテ比大統領の「麻薬戦争」の暗部を物語る1枚となった。

 2016年を象徴する一連の写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

 撮影したカメラマン:Czar Dancel

フィリピンで、殺された夫の遺体を抱きかかえ、嘆き悲しむジェネリン・オライレスさんの画像がインターネット上で広がると、ドゥテルテ大統領はそれを「メロドラマ」と呼んだ。

 強硬な物言いで知られた前ダバオ市長のドゥテルテ大統領は7月、就任後初の施政方針演説のなかで、彼女の画像について言及し、メディアがそれを、聖母マリアが十字架から降ろされたキリストを抱きかかえるミケランジェロのピエタ像のように扱おうとしたと語った。

 マニラではある晩、6人が暗殺された。そのなかには、オライレスさんの夫であるマイケル・シアロンさん(当時29)も含まれていた。シアロンさんは、オートバイに乗った見知らぬ者たちから撃たれ死亡した。

 過去数カ月、私は麻薬密売人の容疑をかけられた人々が殺害される事件を取材してきた。その晩は、各報道機関の記者とカメラマンが一丸となって取材にあたっていた。

 その晩に取材したいくつかの殺人事件の最後がシアロンさんだった。殺人現場というのは常に衝撃的である。数枚シャッターを切った後、オライレスさんがシアロンさんの遺体を抱きかかえているのに気が付いた。

 夫を抱きかかえるオライレスさんを、警察の非常線越しにカメラマンが取り囲んだ。夫の遺体のそばには、「麻薬密売人」と書かれた段ボールの一片が残されていた。

「友人が、マイケルが撃たれたと叫んだ。私は走って外に出た」と、オライレスさんはそこかしこにスラム街や不法占拠者、泥棒が存在するマニラ南部パサイの荒廃した地区でこう語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中