スラバヤ沖海戦で沈没の連合軍軍艦が消えた 海底から資源業者が勝手に回収か
海軍艦艇の沈没による死者は可能な限り遺骨収集をするものの、海底の状況や深度などから回収が困難な場合は「沈没した艦艇を墓に見立てて永遠に保存することで慰霊する」のが各国海軍の共通理解とされているという。
このため沈没軍艦の消失にオランダ国防省は「戦死した海軍軍人の墓が不当に扱われることはあってはならないことである」と不快感を表明、オランダの国内世論もインドネシアに厳しくなっていた。
英国防省も「沈没した軍艦はそのまま保護されるべきで、艦と運命を共にした戦死者はその海底で安らかに眠ることを許されるべきだ」と戦死者の鎮魂を前面に出してインドネシアを批判した。
オランダ首相も首脳会談で善処要求
11月23日、インドネシアの首都ジャカルタの大統領官邸で同国を訪問中のオランダのルッテ首相がジョコ・ウィドド大統領と首脳会談した際に、ルッテ首相からこのオランダ沈没軍艦の消失に関する言及があり、ジョコ大統領は事実関係の調査を約束した。
首脳会談後の共同記者会見でルッテ首相は「原因究明に向けてインドネシア政府が協力を表明したことを感謝する」とわざわざ発言した背景にはオランダ国内世論のインドネシア批判への配慮が込められていた。
さらに重巡「エクセター」が丸ごと海底から消えた英国国防省も事態を重視、インドネシア政府に「深刻な懸念」を表明すると同時に「事実関係の調査と現場海域の保護措置」を求めた。
インドネシア政府はジョコ大統領の強い指示で海洋当局が事実関係の調査に早速着手したが、いつ頃、誰によってどのように沈没艦艇の船体が回収、持ち去られたのか、戦死者の遺骨を含む艦内に残されていた遺留品などの行方はどうなっているのか、謎が多く早期の解決は困難とみられている。
それは失われた艦艇船体は海底から金属を回収する専門の資源業者によって引き上げられ解体、すでに鉄くずなどとして売却されている可能性が極めて高いからだ。
沈没艦艇は資源の宝庫
日本と同様の島国で四方を海に囲まれたインドネシアでは海底に多くの沈没船があることでも知られ、沈船を目当てにしたダイビング観光などのほかに、沈船の積み荷、そして沈船そのものを資源として勝手に回収する業者が存在する。
2014年にはジャワ島西部とスマトラ島南部の間にあるスンダ海峡で、同じく第2次世界大戦中に沈没した米海軍の重巡「ヒューストン」の船体が海底からある日突然消えた事例も報告されている。