流行語大賞から1年、中国人は減っていないが「爆買い」は終了
とりわけブランド品や高級品は他国での販売価格と強い競合関係にある。中国人観光客のブランド品ショッピングを取材したことがあるが、SNSを駆使して友人や親戚と連絡を取り合い、「これは香港のほうが安い」「日本のこのブランドがこの価格なら韓国の商品を買う」などと相談を続けていた。
また、海外製品をネット販売する「越境EC(電子商取引)」の隆盛も「爆買い」減速の背景にあるという。例えば、越境ECサイト大手「天猫国際」の日本館トップページに掲載されている人気商品「足リラシート」の価格は98元(2016年11月18日現在)。日本円にして約1570円だ。関税11.6元(約186円)を支払っても日本国内の販売価格と大差はない。
中国の越境EC利用者に話を聞いたところ、「日本旅行に出かける友だちに買い物をお願いするのは、お礼もしなきゃならないし、なにかと面倒です。値段がそんなに変わらないならネット通販のほうが気楽です」と答えていた。
さらには、今年4月から中国の空港での通関検査が強化されたと伝えられている。8000元(約12万8000円、入国者向け免税店が併設されている空港での基準。それ以外の空港では5000元)の免税枠に変化はないものの、検査される可能性が高まったとして、転売や大量のお土産購入などの大口客に影響したという。
【参考記事】「爆買い」なき中国ビジネスでいちばん大切なこと
数少ない勝ち組、ボッタクリ免税店は今も高収益!?
大きな背景としては上述のとおりだが、それ以外にも個々の要因が見すごせない。勝ち組と負け組が分化しているのだ。
冒頭で紹介したラオックスだが、2014年6月オープンの新宿本店や2015年9月に拡大リニューアルした大丸心斎橋店などに象徴される、高級品をメインターゲットにした新店舗が不発に終わったことが大きい。一等地の大型店舗に高級時計や赤サンゴ、黄金製品などがずらりと並んでいるが、客入りは不調のようだ。また中国のネットでラオックスは価格が高いなどの口コミ情報が広がっていることもマイナスだろう。
一方で、外国人専門のクローズド免税店は堅調と伝えられる。こうした店について知る人は少ないだろう。予約した外国人ツアー客以外はお断りという名目で日本人の出入りが禁止されている。かつて上海租界の公園には「犬と中国人は入るべからず」との看板がかけられていた。恥辱の中国近代史の象徴として今も記憶されている。21世紀の今、日本に「日本人入るべからず」のお店ができているのはなんとも皮肉だ。
こうした免税店は、中国の旅行会社にマージンを支払ってツアーをまるまる招き入れる形式だが、交通が不便な場所にあることが多く、旅行客は他店と見比べることもできないまま店員のマシンガンのようなセールストークを聞き続けることになる。中国旅行会社のツアーには、こうした軟禁スタイルのボッタクリ免税店、土産物店がつきもの。中国国内だけではなく、ヨーロッパやオーストラリアなど海外でも整備されている。