最新記事

中台関係

台湾の国民党は中国共産党に降伏宣言をするのか?――洪秀柱・習近平党首会談

2016年11月1日(火)11時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 1992年に大陸と台湾の両岸政府で交わされた「92コンセンサス」は、「一中各表」という言葉で表現されている。これは「一つの中国を認めるが、どれがその『中国』なのかは、各自が表明する」という、非常に欺瞞に満ちた、あいまいなものだ。しかし少なくとも、「台湾独立を主張しない」という意味では「一つの中国」の方向性を持ち、国連加盟国であることと経済規模、国土面積、人口などから考えて、「一つの中国」が実現されれば、台湾は中国に組み込まれることになろう。

「和平協議」を国民党綱領に

 それに対して、台湾の現政権の民進党は、党綱領に「台湾独立(台独)」を謳っている。したがって、「独立」を実行しないものの、「92コンセンサス」を積極的に認めようとはしていない。

 一方、国民党の馬英九政権時代には「92コンセンサス」を積極的に支持して、2015年11月7日にはついに習近平国家主席と当時の馬英九総統がシンガポールで中台トップ会談を行なうなど、分断以来、最接近の事態さえ起きた。それは人気がなくなった国民党政権が、大陸との経済交流を望む経済界を国民党側に惹きつけようと、総統選挙に備えての下準備でもあった。

 民進党の蔡英文政権が誕生する前の総統選期間中、国民党の立候補者として総統戦に挑んでいた洪秀柱氏は、経済界の人々の票を呼び込むため、「中国大陸と和平協定を結ぶ」という過激な発言までした。それは「国民党が(中国)共産党に降伏宣言をする」のに等しので、台湾国民の激しい反発を買い、国民党内にさえ反対意見を表明する者が現れた。

 このままでは総統選において民進党に敗北することを恐れた国民党は、朱立倫氏を主席に選んで選挙を乗り切ろうとしたが、総統選(2016年1月)で大敗。朱立倫氏は責任を取って辞任し、2016年3月28日に洪秀柱氏が国民党主席に選ばれたのだった。

 こうして2016年5月20日に、民進党の蔡英文政権が誕生したのである。

 すると、巻き返しを図ろうとする国民党の洪秀柱主席は、蔡英文政権誕生後に冷え込んでしまった両岸(中台)経済関係に不満を抱く経済界を味方につけ、蔡英文総統との差別化を鮮明にしようと、親中路線をいっそう強化しようとし始めた。

 今年9月4日、台湾の国民党第19回党大会(全国代表大会)第4次全体会議は、党綱領に「積極的に和平協議を討議することによって、両岸の敵対状態を終わらせる可能性」という文言を新たに入れることを決議したのである。総統選のときには、「和平協議」を唱えたために立候補者から降ろされたのに、党主席に選ばれると、その力を利用して、結局「中国共産党との和議」の方向に動いたわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、対中関税軽減も TikTok売却承認な

ワールド

デンマーク首相、グリーンランド併合を断固拒否 米に

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ1679ドル安 トランプ関

ワールド

関税に対する市場の反応、想定されていた=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中