最新記事

EU

「EU崩壊の危機 独仏がリードして成長や雇用促進を」仏バルス首相

2016年11月18日(金)19時05分

11月18日、フランスのバルス首相は17日、ドイツの首都ベルリンで、フランスとドイツが経済成長や雇用を促進し、国民の懸念に耳を傾ける努力をさらに強化しない限り、欧州連合(EU)は崩壊の危機にさらされると警告した。写真はベルリンで4月撮影(2016年 ロイター/Fabrizio Bensch)

 フランスのバルス首相は17日、ドイツの首都ベルリンで、フランスとドイツが経済成長や雇用を促進し、国民の懸念に耳を傾ける努力をさらに強化しない限り、欧州連合(EU)は崩壊の危機にさらされると警告した。

 南ドイツ新聞主催のイベントでバルス氏は、数十年間にわたってEUの中心だった両国が、「移民問題や加盟国間の連帯の欠如、迫り来る英国のEU離脱、テロリズム」に立ち向かうEUを支援しなくてはならないと指摘。「ドイツとフランスには大きな責任がある」と述べた。

 バルス首相は、フランスは法人税の減税により経済を活性化させ続ける必要があるとした上で、ドイツとEUの全加盟国が成長を刺激し、雇用を創出し、防衛を強化する投資を増やす必要があると語った。

 英国はEU離脱後のEUとの関係を模索する協議において、EUからの移民を制限する一方でEU単一市場へのアクセスを最大限維持したい考えだが、バルス氏は「いいとこ取り」を許すことは他の加盟国の離脱につながるとして、これを阻止する必要があると述べた。

 移民問題は、英国をEU離脱決定へと導いた主要な問題の1つだが、バルス氏は、昨年100万人以上の移民が流入したEUは国境管理を再び強化しなければならないと語った。

 また、英国のEU離脱決定とドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利は、国民の怒りの声を聞くことがいかに重要かを示していると述べた。

 フランスでは、世論調査によると、反EU、反移民を掲げる極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が来年4月の大統領選の第1回投票で勝利するものの、5月の決選投票で敗れると予想されている。

 バルス氏は、トランプ氏の勝利によりルペン党首が勝つ可能性が高まったと指摘。フランスの大統領選をめぐる議論は「極右による危険を無視」しているとし、「私たちは歴史的な瞬間、世界にとって、欧州にとって、そしてフランスとって危険な瞬間に直面している」と警告した。

[ベルリン 18日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中