フィリピン「麻薬戦争」の戦略転換、殺害より逮捕へ
公式データによると、大統領就任から4カ月もたたないうちに、麻薬取り締まりで約2300人が殺害された。この数字は以前の3600人から下方修正されている。死亡者の大半を占める1600人以上は、警察によって殺害されており、米国を筆頭とする西側諸国や、人権団体からの批判を集めている。
「麻薬中毒者を知っているなら、殺しに行きなさい。親にそうさせるのはあまりに痛ましいから」と、ドゥテルテ大統領は6月30日に就任した翌日、支持者に向かってこう呼びかけた。
その一方で大統領は、麻薬容疑者に対する法廷外の殺害、あるいは自警団による殺害は承認していないと明言。「誰が彼らを殺したのか。そのことでなぜ自分が非難されるのか分からない」と今月語った。
貧困者に対する戦争
ドゥテルテ大統領は過去数カ月、主要な麻薬密売人や官僚、そして麻薬を使用したり、麻薬組織から賄賂を受け取ったり、あるいは直接関与したりした有名人に対する取り締まりを表明してきた。
同大統領は違法薬物に関わった疑いのある官僚158人の名前を読み上げるとともに、麻薬容疑者約1000人のリストについて自慢している。
警察は、麻薬を使用あるいは売った罪に問われる有名人のリストを作成中だとしている。
関係筋によると、新たな作戦では違法な麻薬取引に関わる大物、つまり「高価値のターゲット」に狙いを定めた捜査を開始するという。
これまでの取り締まりの対象は、貧しい麻薬使用者や下っ端の売人が圧倒的多数を占めており、貧困者に対する戦争だとの批判を招いていた。
近年、麻薬で逮捕された官僚は、服役するより釈放される傾向が強い。
ロイターが調べたフィリピン司法省のデータによると、2011─2016年に「警察当局者」らを含む官僚715人が麻薬問題で逮捕されていた。そのうち74%が、不起訴あるいは無罪とされていた。
司法省はコメントの要請に応じなかった。