最新記事

フィリピン

フィリピン「麻薬戦争」の戦略転換、殺害より逮捕へ

2016年10月26日(水)10時40分

 公式データによると、大統領就任から4カ月もたたないうちに、麻薬取り締まりで約2300人が殺害された。この数字は以前の3600人から下方修正されている。死亡者の大半を占める1600人以上は、警察によって殺害されており、米国を筆頭とする西側諸国や、人権団体からの批判を集めている。

「麻薬中毒者を知っているなら、殺しに行きなさい。親にそうさせるのはあまりに痛ましいから」と、ドゥテルテ大統領は6月30日に就任した翌日、支持者に向かってこう呼びかけた。

 その一方で大統領は、麻薬容疑者に対する法廷外の殺害、あるいは自警団による殺害は承認していないと明言。「誰が彼らを殺したのか。そのことでなぜ自分が非難されるのか分からない」と今月語った。

貧困者に対する戦争

 ドゥテルテ大統領は過去数カ月、主要な麻薬密売人や官僚、そして麻薬を使用したり、麻薬組織から賄賂を受け取ったり、あるいは直接関与したりした有名人に対する取り締まりを表明してきた。

 同大統領は違法薬物に関わった疑いのある官僚158人の名前を読み上げるとともに、麻薬容疑者約1000人のリストについて自慢している。

 警察は、麻薬を使用あるいは売った罪に問われる有名人のリストを作成中だとしている。

 関係筋によると、新たな作戦では違法な麻薬取引に関わる大物、つまり「高価値のターゲット」に狙いを定めた捜査を開始するという。

 これまでの取り締まりの対象は、貧しい麻薬使用者や下っ端の売人が圧倒的多数を占めており、貧困者に対する戦争だとの批判を招いていた。

 近年、麻薬で逮捕された官僚は、服役するより釈放される傾向が強い。

 ロイターが調べたフィリピン司法省のデータによると、2011─2016年に「警察当局者」らを含む官僚715人が麻薬問題で逮捕されていた。そのうち74%が、不起訴あるいは無罪とされていた。

 司法省はコメントの要請に応じなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官候補巡る警察報告書を公表、17年の性的暴

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ワールド

サハリン2はエネルギー安保上重要、供給確保支障ない

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中