最新記事

フィリピン

フィリピン「麻薬戦争」の戦略転換、殺害より逮捕へ

2016年10月26日(水)10時40分

 10月24日、関係筋によると、大勢の犠牲者を出しているフィリピンの「麻薬戦争」において、同国の警察は、容疑者の殺害を減らし、麻薬取引に関係する名の知れた容疑者逮捕により多くのリソースを投入する方針だ。写真は殺害現場でタグを持つ捜査官。マニラで撮影(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

 大勢の犠牲者を出しているフィリピンの「麻薬戦争」において、同国の警察は、容疑者の殺害を減らし、麻薬取引に関係する名の知れた容疑者逮捕により多くのリソースを投入する方針だ。この件に詳しい関係筋2人が明らかにした。

 このことは、ドゥテルテ大統領が推進する麻薬撲滅運動の戦略転換を示す。同関係筋によると、麻薬取引に関与した疑いのある政治家、軍関係者、警察官、官僚、有名人の逮捕に、より重点が置かれることになるという。

 新たな作戦概要は25日、地方を統括する責任者の集まる警察内部の会合で説明されると、フィリピン国家警察の報道官はロイターに確認した。同報道官は、作戦は数日内に開始されるが、それ以上の詳細は把握していないと述べた。

 関係筋の1人によれば、会合に先駆け、当局者の間で、麻薬取引に関係する容疑者の大量殺害をめぐり「激しい」議論が交わされたという。

 新たな作戦を採用する理由を尋ねると、この関係筋は「司法手続きを経ていない法廷外の殺害に関する問題と関連している。われわれはそれに取り組むため最善を尽くしている。そのような殺害に関する激しい議論の末に決まったことだ」と語った。意思決定に誰が関わったのかについては明らかにしなかった。

 最近の世論調査では、死者が多数出ている麻薬撲滅運動について人々が不安に感じていることを示しており、94%が警察は容疑者を生かすことが重要だと回答している。

 新たな作戦には、警察がコミュニティーのリーダーと協力し、地域から麻薬を一掃し、リハビリ計画を立ち上げることも含まれている。

麻薬国家

 ドゥテルテ大統領は、フィリピンが「麻薬国家」になる寸前だと警告し、麻薬と犯罪を鎮圧するのに6カ月間の猶予を警察に与えていた。その後、大統領はその期間をさらに6カ月間延長していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中