最新記事

キャリア

成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと

2016年10月19日(水)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

francescoch-iStock.

<自分の過去の決断を責め、ただ反省すればいいのではない――。不安定でストレスの多い時代を生き抜くための「打たれ強さ」の身につけ方(2)>

 ここ数年、ビジネスの世界で関心を集めている概念がある。「resilience(レジリエンス)」だ。日本語では「復活力」や「逆境力」、あるいは「折れない心」などと訳されるが、そのままカタカナで「レジリエンス」と表記されることも多い。

 困難な状況を上手に切り抜けるだけでなく、力強く成長する。それがレジリエンスであり、その過程では当然、失敗も経験する。例えば、あれほどスキャンダルにまみれながらも失脚せず、今なお高い人気を誇るビル・クリントン元米大統領や、時代の寵児から一転、証券取引法違反により有罪になった後も、実業家・著述家として活躍する堀江貴文氏といった人物を思い浮かべてみるといい。

 彼らのようにレジリエンスを身につけるには、失敗を糧に前進することが不可欠だ。とはいえ、ただ反省すればいいのではない。イギリスのキャリア・ストラテジストであるジョン・リーズによれば、失敗から何も学ばないことはもちろんだが、何度も繰り返し過去の失敗を見つめ直して自分を責めるのも、同じくらいに問題だ。

 リーズはこのたび、レジリエンスを習得・開発・強化する方法を伝えるべく、『何があっても打たれ強い自分をつくる 逆境力の秘密50』(関根光宏訳、CCCメディアハウス)を上梓した。50の項目にまとめられた実践的な1冊だ。

 ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第2回は「2 失敗を糧に前進し、後退しない」より。失敗から学び、打たれ強い人間になるには、一体どうすればいいのか。


『何があっても打たれ強い自分をつくる
 逆境力の秘密50』
 ジョン・リーズ 著
 関根光宏 訳
 CCCメディアハウス

※シリーズ第1回:レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた

◇ ◇ ◇

 失敗とは何だろう? 大富豪の多くは、過去に何度かビジネスで失敗した経験がある。いつまでもくよくよと後悔し、自分の過去の決断を責めることもできる。だが、過去にとらわれず、同じ過ちを繰り返さないよう、失敗を糧にして「前進する」ことに意識を集中することもできる。学べるだけのことを学んだら先へ進むのだ。

【参考記事】一文無しも経験したから言える「起業=投資論」

 情報過多の世界では、すばやい情報処理が必要なので、グレーよりも白か黒かで簡単に決着させようとする。そんななかで生まれた新たな基準が、完璧か否かだ。「よき」パートナー、両親、同僚、管理職となるために、多くの人が毎日途方もない重圧のもとで常に100%を達成しようとしている。成功でなければ、失敗なのだ。

 自分に対する批判は厳しく極端になりやすいため、多くの物事が、全面的な成功か屈辱的な失敗かの観点から判断されてしまう。だが、それでは人は学ぶことができない。私たちは、毎日自分に向かって「よくできた、完璧だ」と自画自賛することによって成長するのではない。失敗によって成長するのだ。自分の失敗を許すには、ある程度のリスク、確信のなさ、弱さを受け入れる必要がある。

「失敗を糧に前進する」という考え方は、十分に反省すれば、次の段階に進んでもいいと励ましてくれる点で有益だ。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのかを見つめ直すのだ。客観的な目で、もっとうまくできたかもしれないことを検討する。だが、反省のプロセスで立ち止まってしまってはいけない。過去はさまざまなことを教えてくれるが、いとも簡単に抜け出せなくなってしまう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中が24日会合、貿易摩擦緩和目指し=トランプ氏

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機

ワールド

トランプ氏、ロのキーウ攻撃を非難 「ウラジミール、

ビジネス

米関税措置、独経済にも重大リスク=独連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中