文革の真実を求める中国国民を黙殺する「日中友好」の呪縛
これらは決して噂や特異例ではなく、政府公文書も含む豊富な第1次資料による研究成果だ。しかし日本のテレビ局は、その熱意をこのような事実に向けることなく番組を作ることになったそうだ。「中国人が嫌がるような、日中友好の障害となりそうな番組は作らないほうがいい」と社内外の意見に押された結果だ、とディレクターは嘆く。
「嫌がる中国人」とは誰のことか。文革の被害者数については諸説あるが、1000万人に上るという政府高官の見解が中国国民に共有されている。この膨大な数の被害者家族らは真相の解明を嫌がるどころか、期待している。だが共産党政権は彼らを抑圧し、実態解明を嫌がる。
「日中友好」を掲げる日本人も中国国民の真相解明への期待を直視することなく、習近平(シー・チンピン)政権が嫌がる動きを自粛するだけだ。
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さらに頭痛の種は内モンゴル自治区での文革だ。当時モンゴル人は「日本のスパイ」「協力者」と見なされて殺害された。「日本による中国侵略」史観に立って友好を唱える人々にとって、日本も中国も共に満州やモンゴルの植民地化を担ってきたことへの言及は極力避けなければならない。日中友好の妨げになる新たな歴史認識問題に飛び火する危険性もあるからだ。
過去に文革を称賛した者や、日中友好を宗教のように信奉する人たちを、日本では左派や進歩的知識人と表現する。彼らは普段、人権や正義を看板として掲げている。だが文革に関する番組制作を封じ込めようとしている事実を見ると、彼らこそが歴史を反省しようとしない修正主義者だ、と指摘しておかねばならない。
[2016年10月18日号掲載]