最新記事

朝鮮半島

北朝鮮の核実験にキレた韓国が取る次の手段

2016年10月15日(土)09時40分
金泰宇(建陽大学教授)

Kim Hong-Ji-REUTERS

<中国への不信感から日台韓共同での核武装論が浮上。北朝鮮の指導者抹殺を任務とする特殊部隊の計画もある>(写真はソウルで行われた反北朝鮮デモ)

 北朝鮮が先頃強行した5度目の核実験に、当然のことながら韓国は強い反発を見せている。朴槿恵(パク・クネ)大統領は軍に対し、北によるどのような核の挑発にも強く報復できるよう、十分な臨戦態勢を取ることを指示した。

 そんななか韓国では、中国に対する不信感が高まると同時に、自国の核武装論が再び浮上している。

 北朝鮮は国連からすべての核やミサイル発射の実験を禁じられており、これまで国連の制裁を6度受けている。だが、制裁による北朝鮮の非核化は実現していない。国連の動きが効果を持たないのは、中国とロシアの抵抗による部分が大きい。

 中ロ両国は国連安全保障理事会の制裁に名目上加わっているものの、実質的には北朝鮮の体制延命に手を貸している。5つの安保理常任理事国のうち2つの力によって、北朝鮮は核武装計画を温存させてきた。北朝鮮は、安保理が軍事制裁を含む決定的な制裁を行わないことを知っている。

【参考記事】北朝鮮核実験で見えてきた核弾頭量産化の悪夢

 一方で、韓国がTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備を決めると、中国は強く反対。THAAD配備は北朝鮮の実験と同様に挑発的な行為だと非難した。中国国営メディアの中には、ミサイル防衛システムの配備の動きが北朝鮮の5回目の核実験の引き金となったと主張するところもあり、韓国国民を激怒させた。

 韓国では、国防体制の大胆な変革を求める声が起きている。アメリカの戦術核兵器の再配備を求めたり、安保理の無能を批判するだけにとどまらない。

 専門家らは韓国が核兵器開発で日本や台湾と協力して、中国・ロシア・北朝鮮3カ国の戦略的共謀に対抗すべきだと主張。さらには金正恩(キム・ジョンウン)体制の打倒こそ北を非核化する唯一の手段だ、という見方を強めている。

 北朝鮮の核兵器の進展具合に応じて、韓国も独自に核開発を進めるよう要求する政治家も出てきた。8月下旬には与党セヌリ党の国会議員らが政府に、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイルによる脅威の高まりに対し、原子力潜水艦開発で対抗すべきだと要求した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インフレ抑制法関連支出の凍結、EV支援策など対象 

ビジネス

中村審議委員、23日からの決定会合に電話会議で出席

ビジネス

SKハイニックス第4四半期営業利益、初のサムスン超

ワールド

韓国捜査当局、尹大統領を送検 内乱首謀や職権乱用で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中