オーストラリアの社会問題解決を目指すタクシーの取り組み
WORKSIGHT
ソーシャルイノベーションをサポートする政府系組織[tacsi] (写真:CEOの仕事スペース。一見そうとは思えない、カジュアルで可愛らしい部屋。)
[課題] 政府が解決できない社会課題の解を見つける
[施策] 当事者のなかに入り込んでともに課題を探る
[成果] 豪州のソーシャルイノベーションをリードする存在に
2009年、オーストラリア州アデレードに、ソーシャルイノベーションをサポートする政府系組織タクシー(tacsi:The Australian Centre for Social Innovation)が立ち上がった。
発案は、ヨーロッパのソーシャルイノベーション組織NESTAのCEOであるジェフ・モーガン氏による。コ・デザイナーのマーガレット・フレイザー氏によれば、タクシーの存在意義は「長らく改善の見られない社会課題に対し、政府と異なる立場から解決を試みる」こと。
「政府が直接的に『チェンジ』を生み出すのが難しくても、それを促進することは可能。われわれのように、外部から影響を与えられる組織が必要なのです」(フレイザー氏)
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当事者が抱えている課題を時間をかけて理解することから始まる
初年度の活動は社会起業家に対する融資に留まったが、翌年には「サービスプロバイダ」へと舵を切った。「Family by Family」が最初のサービスである。その内容は、問題を抱えた家族と彼らをサポートする家族を引き合わせるというもの。
一般的にソーシャルイノベーションはサポート側に回ることが多いが、タクシーは自らが主体となって当事者のなかにどっぷり入り込み、ともに課題を探る道を選んだ。
「調査のフェーズでは、スーパーマーケット等で『家族の話を聞きたい』と告知したところ、素晴らしい反応がありました。出会った家族にインタビューし、十分な時間をかけて彼らが抱える課題を理解していったのです。たとえば、『子供のしつけをよくしたい』『外出する時間が欲しい』。彼らの多くは自分たちの問題を自覚しているのですが、解決方法がわからないでいます」とディレクターのクリス・ヴァンストーン氏は語る。
「Family by Family」を機に、タクシーはソーシャルイノベーションをリードできる存在として認知された。現在は、タクシーとパートナーシップを結びたい大手企業も現れているという。
「企業は、彼らの顧客が生きたい人生を生きる助けをすることに、目を向け始めている。ビジネスとソーシャルは全く別ものですが、しかし一方では、多くのソーシャルグループがビジネスを求め、また多くのビジネスが社会的影響を求めているのです。これこそ社会的革新だと、私は思います」(フレイザー氏)
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