スウェーデン亡命センターで自死、目的地に着いた難民少年は何故絶望した?
亡命申請手続きに当局がてこずっている間、さまざまな問題が生まれていると精神科医は指摘する。申請者はしばしば孤立し、なかにはこれまでの経験からすでにトラウマを抱え、精神疾患や自傷行為に陥りやすい人もいる。また、犯罪に手を染めたり、最悪の場合は武装グループに勧誘されたりすることもあるという。
「待たされる時間が長いほど、怒りも増す」と、医学史と精神医学の専門家である英ロンドン大学キングス・カレッジのエドガー・ジョーンズ教授は語る。
スウェーデン移民局は職員を増やし意思決定を簡素化したが、今なお待ち時間は増加している。同局によると、待ち時間は、今年後半にピークを迎え、12カ月に達すると予想されている。
「『12カ月、14カ月と待っているが、何も起きない』というような手紙を毎日受け取る」と、移民局のミカエル・リベンビク氏は語る。
同局の記録によれば、2014年1月から8月末までに、あらゆる年齢の亡命希望者において、自殺の恐れがある、もしくは自殺を試みたケースが少なくとも500件あった。スウェーデンではこの時期、25万人以上の亡命申請があった。このうち、3人が死に至っている。動機は不明だが、一部は手続きの遅延に直接関係していることが記録から明らかとなっている。
リベンビク氏は、記録が実際より少ない可能性があることを認めた。何らかの方法で移民担当職員の勤務状況に影響を及ぼした場合にのみ、自殺行為は記録されるという。例えばアンサリ少年の場合は、記録データに含まれない。
調査によると、一般人口より亡命希望者の方が自殺を図る可能性が総じて高い。亡命希望者は、逃れてきたトラウマが主な原因で、うつ病やその他の精神疾患を患う確率が高い。スウェーデン政府や他団体の推計によれば、同国では亡命希望者の約4分の1が、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような精神疾患に苦しんでいるという。
アンサリさんは独りでスウェーデンまでやって来た。検視報告書によると、アンサリさんはうつ病と双極性障害を患っていた。友人の話では、アンサリさんはひどく家族を恋しがっていたという。手続きのための面接を何カ月も待たされたあげく、約束された面接も移民局からキャンセルされたり、手違いで先延ばしにされたりした。
「彼はよく不満を口にしていた」と語るのは、亡命を希望する仲間であり、同じアフガニスタン人のモーセン・ナガウィさん(18)だ。「ついていないと感じていた」
アンサリさんが住んでいたスウェーデン南部ブレーキンゲ地方で精神科の医務局責任者を務めるペーテル・バルベリウス氏は、2度目の面接もキャンセルされたことが決定打となったと推測。「それが引き金になった可能性は大きい」と少年の死亡調査に関わった同氏は話す。