トランプの新政策が物語る「大衆の味方」の大嘘
Mike Blake-REUTERS
<大規模減税や規制緩和の導入といったトランプの経済政策から透けて見えるのは、富裕層や主流層に擦り寄りたいという本音>(写真はトランプとヒラリーの模型飛行機)
9月末に、会員制の「ニューヨーク経済クラブ」で経済政策について講演した米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ。グローバリズムの弊害や製造業の雇用喪失など聞き慣れたテーマについて一通り話した後、リッチなビジネスマンたちに向けて、野心的な政策を提示した。
いわく、自分が政権を取ったら、「4%の成長率」を目標にする。「私の経済顧問たちは黙っていてほしいそうだが、私はもっといい結果を出せると思っている」とも、彼は付け加えた。
4%の成長率という目標に聞き覚えがある人もいるだろう。今回の大統領選でそれを口にしたのはトランプが初めてではない。共和党予備選を途中撤退したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、4%成長を公約に掲げていた。トランプはそれをこき下ろしていたのに、今になって同じことを言い出すとは。間抜けな男の顔に砂を蹴りかけて、恋人を奪うのに等しい行為だ。
党内の献金者たちに擦り寄っているのはその点だけではない。トランプは選挙戦でポピュリスト(大衆主義者)を装っているが、実際は富裕層や共和党のエスタブリッシュメント(主流派)が最も望む政策を出してきている。つまり選挙資金をたっぷり寄付してくれるような金持ちが得をする、大規模減税と規制緩和だ。
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金融規制改革法も廃止
昨年発表した経済政策では10年間で10兆ドル規模の減税がうたわれた。最も大きな恩恵を受けるのは富裕層で、政策としてはまるであり得ない、パロディーのようなものだった。今回の講演で見せた青写真では少し規模を縮小したが、それでもまともとは言えない4兆4000億ドルの減税を宣言。これもほとんどが富裕層の利益になる。
トランプは、所得税減税(話題になった育児費用の控除を含む)は、中流世帯の税負担を軽くすると主張。一方で、「500万ドル稼ぐような人々の税負担は実質的に変わらない」とした。