最新記事

インタビュー

経営不振のバスケチームを人気No.1にした勝因とは?

[島田慎二]株式会社ASPE 代表取締役

2016年10月20日(木)18時24分
WORKSIGHT

<観客動員数がリーグ随一という日本の人気バスケットボール・チーム、千葉ジェッツ。しかし、実はわずか4年前には経営不振で存続の危機に瀕していた。再建を担ったのは、スポーツは門外漢だった経営コンサルタントの島田慎二氏。一体どんな再建計画を立て、いかにそれを実行していったのか>

 千葉ジェッツを運営する株式会社ASPEの社長に就任したのは2012年のことです。

 当時、ジェッツは経営不振で存続が危ぶまれていました。そこで経営コンサルタントをしていた私に、再建計画を立ててほしいと道永幸治取締役会長から依頼があったんです。リサーチと分析の結果、膨大な数の小口債権者を整理してガバナンスを再構成すること、資金調達力を強化すること、社内の士気を高めることなど、ヒト、モノ、カネに渡る再建計画を40ページくらいのペーパーにまとめて提出しました。

 本来ならそこで私の仕事は終わるはずでしたが、さらに社長として再建を実行してくれないかと指名を受けたんです。バスケットはもとよりスポーツチームの経営に携わったこともありませんし、いばらの道であることも重々承知していましたが、道永会長にはかつて別の事業でお世話になっていましたし、他の支援者の方からも島田が引き受けないなら手を引くとまで言われて、これはもう腹をくくってやるしかないと社長を引き受けることにしました。

全てのステークホルダーと共にハッピーになるために

 再建は計画に沿って粛々と進めるわけですが、それにはまず自分たちが何のために活動し、何を拠り所とするかを明確にする必要があると考えました。そこで社員みんなの意見も聞きながら、活動理念と13項目からなるミッションを次のように決めたんです。

<活動理念>
 千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる

<ミッション>
 1. ブースター* の皆様にとって身近で愛着のある存在になります。
 2. ブースターの皆様の声に真摯に耳を傾けます。
 3. ブースターの皆様と喜び、感動し、一体感を共に味わうことを大切にします。
 4. パートナーの皆様の協賛価値を共に向上させます。
 5. ボランティアの皆様・フライトクルー* と共に試合興行、イベントなどを作りあげていることを忘れません。
 6. 地域の皆様の誇れる存在になります。
 7. 子供たちの夢見る舞台を継続的に提供していきます。
 8. プロスポーツチームだからこそできる社会貢献を果たします。
 9. 地域を盛り上げるために積極的にイベントに参加します。
 10. 共にサービスを提供する取引業者との絆を深めます。
 11. 選手はチームワークを大切に、愛され、そして勝てるチームになります。
 12. スタッフは一致団結し、働きがいのある職場環境を皆で創ります。
 13. スタッフ・株主が成果に対するリターンを享受できる組織になります。

 何のために千葉ジェッツが存在しているのかといえば、関係する"全て"の人たちと一緒に幸せや楽しさ、充実感を味わうため。それを具体的に示したのがミッションで、ブースターの方々、パートナーの団体・企業、興行を支えてくれる業者、自治体、地域の方々や子どもたち、さらに選手やスタッフ、株主に対して、ジェッツというチームが何を提供できるか、どのようにつながりあえるかを明らかにしました。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中