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93年、米国を救ったクリントン「経済再生計画」の攻防

2016年10月22日(土)07時12分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

僅差の上下院通過

 包括的予算調整法案は5月に下院、6月に上院を通過し、両院での法案の相違を埋めるため、両院協議会にかけられることとなった。共和党議員はこの法案に反対の方針で一致団結しており、上下両院とも多数を占めていた民主党でも、翌年の中間選挙で再選を控える議員は、同法案への賛否について頭を悩ませるものが少なくなかった。

 審議の過程で、石油産出州・石炭産出州の議員や大企業がBTU税に反対したことによって、結局BTU税導入は断念せざるを得なくなり、これに代わってガソリン増税が盛り込まれることが決まった。

 また、歳出面では向こう5年間で4960億ドルを削減(審議の過程で、大統領の原案よりも1210億ドルの削減額が上積みされた)することが決定し、メディケア支出を558億ドル削減すること、食糧配給切符への支出を抑制することなども含まれていた。

 両院協議会を経た包括的予算調整法案の最終的内容は、結果的に民主党・共和党双方にとって不満を残すものであった。

 民主党のリベラル派にはメディケア、学生融資、農業補助金といったリベラルなプログラムの義務的経費が削られていくことへの抵抗が強くあった。逆に共和党は赤字削減の努力がなお不足していると感じており、また富裕層や企業への増税を含む法案には賛成しがたいということもあった。

 8月5日に行われた最終投票では、下院本会議で土壇場になって態度を決めかねていたマージョリー・マーゴリーズメズビンスキー議員(民主党、ペンシルベニア州選出)が賛成に転じ、218票対216票の僅差で可決にこぎ着けた。上院本会議では50票対50票で賛否同数になったが、上院議長であるゴア副大統領の「最後の1票」で辛うじて可決している。

 ちなみに、下院で「最後の1票」を投じたマーゴリーズ=メズビンスキーは翌年の中間選挙で議席を失ってしまう。彼女には養子を含めて11人の子どもがいるのだが、息子の1人であるマーク・メズビンスキーはのちにチェルシー・クリントンと結婚し、クリントン夫妻の女婿となった。

 両院ともに共和党からの賛成者は皆無であり、民主党からは下院で41人、上院で6人の造反者が出ている。両院ともに、あと1人でも造反者が出れば否決という大変な僅差であった。

※シリーズ第4回:ポスト冷戦の民主党を再生させたビル・クリントン


『ビル・クリントン――停滞するアメリカをいかに建て直したか』
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