VR元年に攻める韓国、映画も没入感あふれる次世代上映が大ヒット
ところで、なぜ韓国映画界はスクリーンX をはじめ4DXといった新しい映画館の形を求め開発するのだろうか? 近年、韓国はシネコン・チェーンの映画館が全国の大半を占めている。どの映画館へ行ってもほぼ同じ作品しか上映されておらず、映画館側は観客を確保するため、特別な味のポップコーンを提供したり、アニメ映画との限定コラボレーショングッズを開発したり、差別化を図ろうと必死である。ポイント制度は、今や韓国映画館での常識となっている。しかし、最近はそんなプラスアルファでの差別化ではなく、映画作品と映画館自体のエンターテインメント性での差別化を図り、観客も映画館にしかないコンテンツを求め、わざわざ足を運ぶ時代に変わってきている。
4DやスクリーンXのように、よりリアルな体験を求めて観客は映画館に集り、そしてお金を落としていく。VRはいつでもどこでもヘッドセット一つで仮想の世界を簡単に体験できるコンテンツを実現したが、映画館はいかに足を運んでもらうかを模索し、ライバルであるはずのVRとも手を組んで、ここでしか見ることのできない体験を提供しようと日々開発に取り組んでいる。
現在まで、韓国、中国、北米などでスクリーンX形式で上映された作品は韓国映画8作品、中国映画3作品(9月公開の「Chinese Odyssey3」を含めると4作品)、その他コンサートや公演などのオルタナティブ・コンテンツ2作品。このうち8作が今年に入ってからの公開作品で、スクリーンX形式への対応はここにきて急に増えている。特に、6月に韓国で公開され7月には日本でも公開された人気アイドルBIGBANGのデビュー10周年記念ドキュメンタリー「BIGBANG MADE」は、韓国、北米、タイでスクリーンXバージョンが公開され熱い反響を得た。ワールドツアーコンサートを3面特殊カメラで撮影した映像は、まるでコンサート会場をそのまま劇場に移したかのようだと海外のプレスから激賞を浴びた。
2016年はいわば韓国の「スクリーンX元年」である。今後も引き続きスクリーンX作品は制作され、多くの感動と共感を与えるであろう。作り手が3面スクリーンというアイディアを生かした斬新な作品を発表し、ひいては映画自体の表現の可能性も広げていくことに期待したい。