シリアという地獄のなかの希望:市民救助隊「ホワイト・ヘルメット」の勇気
アレッポで女性を救い出す住民たち Abdalrhman Ismail-REUTERS
<アレッポの瓦礫から救出された血まみれの5歳の少年ダクニシュ君を覚えているだろうか。彼を助けたシリア人のボランティア人命救助部隊「ホワイト・ヘルメット」の凄まじい「日常」が、生々しい映像と共にネットフリックスの短編ドキュメンタリーになった。14日に、トロント国際映画祭から世界に向けて発信される>
オレンジ色のストレッチャーを持った男たちが、ほこりにまみれた巨大な山のような瓦礫に向かって怒りながら走る。幼い女の子と男の子が別の男の腕に抱かれて画面に現れると、バンという2回目の爆発音が鳴り響く。すでに空爆を受けて廃墟と化している建物のなかではいま、救助活動が行われている。そして、画面は暗転する。
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これは、9月16日から全世界で配信されるネットフリックスの短編ドキュメンタリー『ホワイト・ヘルメット』のオープニングシーンだ。視聴者は40分間にわたって、総勢2900人を擁するシリアのボランティア団体「ホワイト・ヘルメット」の「日常」を垣間見る。隊員は命の危険を冒して、世界で最も危険な紛争地帯で人命を救助しているのだ。
血塗られた5年半
この番組は、元建築作業員と元鍛冶工、元テーラーの3人の男たちを追っている。アレッポの同じユニット内で活動している3人は、トルコで訓練を受けた。内戦のせいで、シリアでは救助活動に必要な訓練を受けることができないのだ。そして彼らは危険な母国に戻ってきた。
シリアの血塗られた内戦は5年半にもおよんでいる。ホワイト・ヘルメットが確認したところ、これまで彼らが救った命は6万人にも上る。市民を襲う攻撃の多くは、シリア政府軍の「たる爆弾」や、ロシア軍の空爆だ。
ホワイト・ヘルメットは中立の立場を貫いている。犠牲者の救助に駆けつけたあと、今度は救助隊員を狙った爆撃で何十人もの隊員の命が失われてきたことを考えると、称賛に値する態度だ。9月7日には、一般市民の救助を試みようとした隊員4人が死亡した。先月は、隊員のハレド・オマーが空爆を受けて死亡した。オマーは、瓦礫の下に16時間も取り残されていた「奇跡の赤ちゃん」を救った男だ。
ノーベル平和賞にノミネートされているホワイト・ヘルメットは、5歳のオムラン・ダクニシュの救助でさらに名を上げた。ダクニシュは、アレッポで空爆を受けた後瓦礫のなかから救出され、血だらけで虚ろな眼差しで座る姿が世界に衝撃を与えた。ホワイト・ヘルメットの傑出した英雄たちのメッセージは、一切希望がないように見える紛争のただなかで広がり始めている。
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これが『ホワイト・ヘルメット』製作陣の狙いだ。目的は、作品名の元となった組織、ホワイト・ヘルメットの存在を世界に伝えることである。監督のオーランド・フォン・アインジーデルとプロデューサーのジョアンナ・ナタセガラの両者は以前、手がけたプロジェクト『ヴィルンガ』でアカデミー賞にノミネートされた。