ドゥテルテ大統領下のフィリピン麻薬戦争、死者の山に口閉ざす人々
死者数の増加にもかかわらず、パルス・アジアが7月に行った世論調査におけるドゥテルテ大統領の支持率は91%に達している。
事態を憂慮したカトリック教会が「汝、殺すなかれ」という戒律を思い起こすよう呼びかけているが、カトリック教徒が多数を占める国にもかかわらず、ほとんどニュースにもならない。新聞各紙は、最新の殺害事件についての息を呑むような報道を選好しているからだ。
ドゥテルテ大統領は、反大統領派の筆頭であるレイラ・デリマ上院議員に対する手厳しい攻撃を続けており、彼女が自ら麻薬取引に手を染め、運転手と不倫関係にあると批判している。
デリマ氏は先週ロイターの取材に対し、5歳の少女が頭部を撃たれる事件まで発生するという「狂気的」な状況を嘆きつつ、「このような事態を止めることができるのは大統領だけだ」と語った。
「いったいあと何件こうした巻き添え被害に耐えれば、われわれは本当にこの状況を嘆くことができるようになるのか」と訴える。
海外からの批判に関して、ドゥテルテ大統領は呪詛の言葉を織り交ぜつつ冷笑を浴びせている。
国連が殺害事件の急増を批判したことに対し、ドゥテルテ大統領は強い調子で反論し、今週ラオスで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の際に潘基文・国連事務総長と会談することを断った。
ドゥテルテ大統領は6日にラオスでオバマ米大統領と会談する予定だったが、「米国では黒人が無抵抗の意志を示していても撃たれている」と述べ、その米国の大統領から人権に関する授業を受けるつもりはないと明言している。
<「誰もが恐がっている」>
ドゥテルテ大統領の地元であるダバオ州の市場で14人が死亡する爆弾テロが発生したことを受けて、大統領がさらに弾圧を強める可能性がある。
警察はこの爆弾テロについて、過激派組織「イスラム国」とのつながりのある過激派グループ「アブサヤフ」(これについてもドゥテルテ大統領は撲滅を誓っている)の犯行と見ているが、大統領は麻薬に対する戦争によって他の敵を作りつつあり、今回のテロによって、大統領暗殺計画についての噂が取り沙汰されるようになった。
ドゥテルテ大統領は爆弾テロを受けて、「無法状態」を国中に宣言した。これは、軍による検問やパトロールによって警察支援を認める措置だ。
同大統領は、22年間にわたりダバオ市長を務めるなかで築いてきた強引な犯罪撲滅モデルを、驚くほどのスピードで全国に広げていった。