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日本経済外食業界は再び低価格シフト、節約志向の顧客呼び戻しへ
9月8日、外食業界の低価格シフトが広がっている。日本マクドナルド(写真)は12日から400円の平日ランチメニューを投入すると発表。7月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai/File Photo)
消費者の節約志向の高まりに対応する形で、外食業界の低価格シフトが広がっている。過去のデフレ局面で消費者の物価観に影響を与えてきた日本マクドナルドが12日から400円の平日ランチメニューを投入すると発表した。
他の外食チェーンでも、客単価上昇が見込みにくくなる中、お得感のあるメニューをそろえ、客数増につなげる動きが強まっている。
外食市場の変化について、すかいらーく <3197.T>の谷真社長は「昨年12月から消費者の状況が一変した」と話す。将来への不安から若年層の消費意欲が低下しているほか、年末からの株安により、付加価値化路線を支えてきたシニア層も消費に慎重になったことが大きな要因だと分析する。
<ファミリーレストランで明暗、低価格が支持>
ファミリーレストランは、アベノミクス下の景気拡大に乗る形で、2013年ごろからステーキなど高価格帯メニューの充実を図り、客単価を引き上げて売上高を伸ばしてきた。しかし、消費者の節約志向が高まる中、高付加価値路線は行き詰まりを見せ、客数は減少。各社は今年に入って低価格商品の投入に動き出し、顧客呼び戻しに躍起になっている。
すかいらーくグループのガストの7月既存店売上高は9カ月ぶりにプラスに転じた後、8月は6.5%減と再び大幅なマイナスとなった。毎月の変化はあるものの、「前年対比で休日の数を勘案すれば、前年割れのトレンドに変化はない」(広報)というのが同社の見方だ。
客数の回復を図るため、ボリュームがあり、値ごろ感のある商品を増やすなど、同社は6月中旬にメニューの約70%を改定した。「ガストの顧客の来店頻度は3―4カ月に一度。今後、数カ月かけて、メニュー改定の効果をみていく」(同)としている。
一方、14年4月の消費増税時にも税込み価格を維持するなど、ファミレスのなかでも低価格を貫いてきたサイゼリヤ <7581.T>は好調を続けている。今年に入ってからの既存店売上高は、3月と5月はマイナスになったものの、他の6カ月はプラス。下期(3―8月期)についても、前年同期比1.6%増と増加基調にある。
<ランチはワンコイン以下>
吉野家ホールディングス <9861.T>が4月に販売を開始した豚丼は、並盛で330円と、牛丼よりも50円安い。当初、1年間で2000万食強の販売を予定していたが、5カ月で早くも1500万食程度に達した。「価格と価値のバランスが評価された。顧客のオーダーの構成比も10―13%を占め、牛丼に次ぐ支持を得ている」(広報)という。
同じ牛丼業界の松屋フーズ <9887.T>は、とんかつ専門店の「松のや・松乃家・チキン亭」で3種の定食をワンコインの500円とする期間限定のフェアを8日から始める。
さらに、業界関係者が注目したのは、日本マクドナルドがハンバーガーとドリンクで400円という低価格な平日用ランチセットの発売を決めたことだ。バブル崩壊後、マクドナルドのハンバーガーの値下げとデフレ進行がリンクしていた過去を思い起こさせる。
リクルートライフスタイルの調査によると、7月の外食市場規模は東名阪3域計で3315億円となり、3カ月連続で縮小した。外食頻度は前年と大きな変化はなかったものの、単価の下落が市場規模縮小につながった。前年比100円を超える単価下落は、2014年1月以来ほぼ2年半ぶりだという。同社が運営するホットペッパーグルメ外食総研の稲垣昌宏氏は「20代男女の居酒屋利用が減少し、ファストフードなど単価の安い業態に流れた」と分析する。
実際、ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)のなかでも、缶ビールや新ジャンルが好調に推移するなど「家飲み」の傾向は強まっている。
15年度は客単価上昇により市場規模が拡大した外食市場。昨年度は市場規模が拡大した月が9カ月、縮小の月が3カ月だったのに対し、今年度は市場規模拡大が1カ月、縮小が3カ月となっている。稲垣氏は「明らかに風向きが変わってきた」と指摘している。
農水省は7日、10月期の輸入小麦の政府売渡価格を7.9%引き下げると発表した。円高によって原材料価格の下落につながっている。一方では、外食業界に欠かせないパートやアルバイトの時給をはじめとする人件費は上昇が続いている。外食企業は、消費者マインドとコストをにらみながら、難しい価格戦略が求められている。
*本文中の名称を修正して再送します。
(清水律子)