最新記事

リーダーシップ

頭が良すぎるリーダーの、傲慢で独りよがりな4つの悪い癖

2016年9月5日(月)18時42分
マーシャル・ゴールドスミス ※編集・企画:情報工場

4.「なんで自分みたいにできないんだ?」と言う

 私がコーチングを担当した「スーパー・スマート」リーダーの一人、ジョーのチームのミーティングを見学したことがある。直属の部下たちが各々の到達目標に対する進捗状況を共有するために、報告を行っていた。その中の1人は、明らかに行き詰まっていた。

 ジョーは言った。「Xを試すことは考えたのか?」。「思いもよりませんでした」と部下。ジョーは苛立ち、こう言い放った。「わかりきったことじゃないか!」。そしてジョーは部下たちを見回してこう言った。「誰もXを思いつかなかったのか? 私だけしかわからなかったとは信じられない!」

 ミーティングの後、私はジョーに言って聞かせなくてはならなかった。あの部下たちは「普通」なのだと。普通じゃないのはジョーのほうだ。彼らは善良でよく働く、「頭の良い」人たちだ。ただジョーほどは頭が良くなかっただけだ。ジョーは、「普通の人間」と一緒に働く術を学ばなくてはならなかった。さらに私は、彼自身が変わらない限り、彼と同じくらい頭の良い人であっても彼と一緒に働きたいとは思わないだろう、とつけ加えた。

 私がこれまでに出会った中で最高のリーダーの1人から、素晴らしい教訓を得られたことがある。「個人として偉大な業績をめざす人にとって大切なのは自分自身だ。だが優れたリーダーをめざすならば、"彼ら"(部下など自分以外の存在)を大事にしなければならない」

 ここまでに挙げた「頭の良い人」の4つの問題点は、いずれも「自分自身を大切にする」ことによるものだ。それに対して「"彼ら"を大事にする」には、彼らが正しいことも認め、彼らが答えにたどり着くことを誇りに思わなくてはならない。この「自分自身が大切」から「"彼ら"が大事」にシフトするのは容易ではないのだろう。

「知能(intelligence)」と「知恵(wisdom)」には大きな隔たりがあるのかもしれない。知能の高いリーダーが自分の優秀さを誇示している間に、知恵のあるリーダーは誰かがヒーローになる手助けをしている。

[執筆者]
マーシャル・ゴールドスミス Dr. Marshall Goldsmith
エグゼクティブコーチングの世界的権威の1人。30冊以上の本を世に送り出してきたベストセラー作家で、『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(共著、邦訳・日本経済新聞出版社)はアメリカだけでなく、日本でもベストセラーとなった。

© 情報工場
johokojologo150.jpg



※当記事は「Dialogue Q3 2016」からの転載記事です

dialoguelogo200.jpg





情報工場
2005年創業。厳選した書籍のハイライトを3000字にまとめて配信する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を提供。国内の書籍だけではなく、エグゼクティブ向け教育機関で世界一と評されるDuke Corporate Educationが発行するビジネス誌『Dialogue Review』や、まだ日本で出版されていない欧米・アジアなどの海外で話題の書籍もいち早く日本語のダイジェストにして配信。上場企業の経営層・管理職を中心に約6万人のビジネスパーソンが利用中。 http://www.joho-kojo.com/top


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ次期大統領、予算局長にボート氏 プロジェク

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指

ビジネス

アングル:データセンター対応で化石燃料使用急増の恐

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中