最新記事

リーダーシップ

頭が良すぎるリーダーの、傲慢で独りよがりな4つの悪い癖

2016年9月5日(月)18時42分
マーシャル・ゴールドスミス ※編集・企画:情報工場

laflor-iStock.

<一般に「頭が良い(smart)」ことはリーダーに必要な条件と思われているが、頭が良い人特有の「悪い癖」が出ると、良いリーダーにはなれない。特に「スーパー・スマート」と言うべき並はずれた知能を持つリーダーには、傲慢さから来る4つの「悪い癖」がある>

 私はエグゼクティブコーチであり、これまでに150人以上の大企業トップと仕事をしてきた。彼らは全員、知的能力(EQなどで測られる「心の知能」や芸術的な能力を除く)を示す一般的なあらゆる指標で平均をはるかに上回る数値をたたきだすはずだ。企業のトップは愚かなことをしでかすこともある。しかし本当に愚かな人物であることはほとんどない。

 ここでは頭の良い人たちが抱える典型的な問題点を4つ挙げる。これらは、並外れた知能をもつ「スーパー・スマート」な人たちには、よりいっそう当てはまるものだ。

【参考記事】心が疲れると、正しい決断はできない

1.自分たちがいかに頭が良いかを誇示する

 私は10年ほどピーター・F・ドラッカー財団の役員をさせていただいた。そのおかげで、ドラッカー本人と50日間以上一緒に過ごす機会を得ることができた。ドラッカーは疑うべくもなく「スーパー・スマート」の1人であり、それどころか「スーパー・ワイズ(超賢人)」と言っていい人物だ。

 ドラッカーは私にこんなことを教えてくれた。「私たちの人生におけるミッションは『常に進歩すること』であり、頭の良さを誇示することではない」。この基本的な教訓を理解していないリーダーがあまりに多いことに驚かされる。

 私が以前コーチングを担当した「スーパー・スマート」リーダーの1人は、最初の面談の1時間のあいだに、6回もいかに自分が優秀かを語った。また、数千人のリーダーを対象に、次のような質問をしたことがある。

●あなたのすべての対人コミュニケーションのうち、次のAとBの合計が何パーセントを占めていますか?

A:自分がいかに頭が良く、特別で素晴らしい存在かについて会話をする(自分が話すか、聞き役に回る)
B:他の誰かがいかに愚かで拙劣、間抜けであるかについて会話をする(自分が話すか、聞き役に回る)

 驚いたことに世界中どこでも「65%前後」という回答が多かった。自分がどれだけ頭が良いかを誇示したり、他者がいかに愚かであるかを指摘すること、あるいはそういった話を聞くことで得られるものは何もない。「何も得られない」ことに、対人コミュニュケーションの約65%を費やしているのは、どう考えても無駄だろう。

 一般的に頭の良い人は、これまでの人生の中で、自分の頭の良さを何度も何度もひけらかしていたに違いない。そうすることで周りから「頭が良い」と思われてきたのだ。すなわち彼らは、「頭が良い」ことに対してたくさんの肯定的評価を受けてきた。人間には(動物にも)、ポジティブな方向に心を強化してくれる行動を繰り返す傾向がある。「頭が良いことを誇示→周りからの肯定的評価」というサイクルを繰り返すほど、先ほどのドラッカーの教訓が忘れられていくことになる。

【参考記事】20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中