ビットコインだけじゃない、ブロックチェーン技術を使った注目のスタートアップ
これらのサービスは、ブロックチェーンの改ざんの難しさと、データが失われることがほぼないという特徴を利用しています。また、サービスを運営の仕組みという点でも、新しい形となる可能性があります。従来の中央管理型のサービスであれば、運営会社がシステムを構築し、運用します。コストは運用会社が全て負担し、システムの利用者に利用料を請求したり、広告などで収益化します。このため、収益化が難しいようなサービスを作ることが難しく、運営会社が潰れればサービスもどうなるか分かりません。
また、ダイヤモンド、美術品というような高価なもののデータを扱う場合、もしデータが失われたり、ハッキングで壊されたりした場合、運営会社には訴訟され、多額の賠償を負うリスクがあります。ブロックチェーンを用いてネットワークの参加者が支えあう仕組みにすることでこのような問題が解決されれば、これまでは存在が難しかったようなサービスが提供されるかもしれません。
3. 分散型SNS Synereo
Synereoはブロックチェーンを用いた分散型SNSです。FacebookやTwitterなどは運営会社が管理するシステムにデータが集められ、中央管理されていることに対して、ユーザーにも利益を還元するような仕組みを目指しています。
ブロックチェーンの特徴から、従来のSNSのように運営会社の都合によってサービスが終了させられることがありません。次に、データが分散して保存されるため、検閲によってデータが削除されたり、修正されることはありません。 また、Synereoはアテンション・エコノミーという、自分の発言や投稿への注目を貨幣と同じように交換できる価値であるとする原則に沿って、利益を利用者に分配する仕組みを提供しようとしています。
Facebookの場合、企業が広告主となりFacebook社にお金を支払うことで、Facebook社が利益を上げ、それを使ってサービスを運営しています。どんなに面白いコンテンツを投稿したとしても、その人にお金が入ることはありません。
これに対しSynereoはユーザーに利益を還元する仕組みを持っています。AMPと呼ばれるSynereo内で使える仮想通貨が発行されます。AMPを使うと、自分の投稿を他の人にも見てもらいやすくなります。AMPは主に企業が自分たちの投稿を広告として広めるために使うと想定されます。Synereo内での人気(つまり注目度)に応じてユーザーにはAMPが還元されます。AMPはもちろんドルに交換することができます。
Synereoは、AMPを事前販売するクラウドファンディングを実施してサービスローンチまでの開発費を集めており、自分たちや投資家のお金でサービス開発を行う従来のサービス開発とは、資金調達においても一線を画す方法を用いています。現在、Synereoはα版のリリースに向けて準備を進めています。ブロックチェーンを使ってSNSを作ろうとするのは驚きですし、実際にこの仕組みが成り立つか、非常に興味深い事例です。
SNS以外のインターネットサービスでも、ブロックチェーンを用いればこれまでと違った形でサービスを構築できる可能性があります。
4. 未来予測システム Augur
予測市場用のブロックチェーンを用いたオープンソースプロジェクトです。予測市場というのは、未来の出来事に対して不特定多数の人が賭けを行い、オッズに応じた配当が分配されるされる仕組みです。 未来の出来事とは、スポーツの結果はもちろん、アメリカ大統領選まであらゆるものが対象になります。単純な見方をすればギャンブルですが、学術的に見ると多くの無数の群衆の意見を集約してその出来事が起こる可能性を算出しているとも言えます。
このような集合知、群衆の知恵を使うと、高い精度で出来事を予測できることがよく知られており、研究でも証明されています。決して多くはないサンプル数から算出される世論調査よりも、不特定多数が参加するブックメーカーのオッズの方が正確であるとされる場合もあります。実際にイギリスのEU離脱の国民投票の前には、ブックメーカー各社のオッズも注目されました。
ブロックチェーン技術を用いることで、公平で透明性の高い仕組みを実現することができます。イギリスのブックメーカーなどは、これまでのシステムは中央管理型で構築されているのですが、管理者(多くの場合はブックメーカー)が恣意的にシステムをシャットダウンすることができたり、自分に都合の悪いデータを改ざんしたり、隠したりする恐れがあります。ブロックチェーンを使うことでより民主的にシステムが運用されます。
※当記事は「Nissho Electronics USA」からの転載記事です。