ブレグジットで泣くのはEUだ 欧州「離婚」の高すぎる代償
法的な面では、多くの国際金融契約が長年、イギリス系の英米法に基づいており、英語で表記されている。これらの制度や慣行が大幅にフランスやドイツなどヨーロッパ大陸系の大陸法に移行することになれば、弁護士は仕事が増えて大喜びだろうが、企業は相当な負担を強いられるだろう。
信頼不足はむしろユーロ
最後に、イギリスは今後も世界の主要な金融センターであり続けるはずだ。世界の1日のデリバティブ(金融派生商品)取引高は9兆4000万ドル、その43%がロンドンで行われている。しかも英ポンド建てではない。実はイギリスではドイツとフランス(経済規模はそれぞれ世界第4位と第6位)を合わせた額の4倍に上るユーロ建て取引が行われている。
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最近の報道によれば、オランダのアムステルダムやドイツのフランクフルトなど、EU加盟国の一部は、早くもロンドンからの企業の誘致に乗り出しているらしい。その戦術が裏目に出る可能性も十分ある。
EUの経済成長にとって「金の卵を産むガチョウ」のロンドンがつぶれれば、後悔するのはEUだ。むしろギリシャやスペイン、ポルトガルを考えれば、EU全体の大規模な構造改革が実現しない限り、ユーロが機関投資家の信頼を得られるかどうか怪しいものだ。
イギリスは今もこれからもヨーロッパの一部だ。距離にしてほんの30数キロ。これが地理的な現実だ。従って双方が引き続き共存の道を探らなければならないだろう。
離婚しても家計は1つで、というのは虫がよ過ぎる。
[2016年8月23日号掲載]