最新記事

日中関係

岸田外相、中国の程永華駐日大使を呼び出し公船の即時退去を要求

2016年8月9日(火)13時19分

8月9日、岸田文雄外相(写真)は午前、尖閣諸島(釣魚島)周辺で最近、中国公船が多数航行していることを受け、中国の程永華駐日大使を外務省に呼んだ。都内で昨年10月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

 岸田文雄外相は9日午前、日本が領土と見なす尖閣諸島(釣魚島)周辺を多数の中国公船が航行している問題で、中国の程永華駐日大使を呼んで抗議した。公船の動きが活発化した5日以降、外相が大使を呼ぶのは初めて。日本側は抗議のレベルを一段階上げた。

 岸田外相は程大使に対し、「一方的に現場の緊張を高める行動を取っていることは断じて受け入れられない」と抗議。公船の即時引き揚げを要求した。

 また、6月に中国の軍艦が尖閣諸島の接続水域を航行したことや、空軍の戦闘機が同諸島に向かって南下した事例にも言及し、「日中関係をめぐる状況は著しく悪化していると言わざるを得ない」と伝えた。

 程大使が外務省の応接室に入ったのは午前10時ごろ。岸田外相は出迎えをせず、10分ほど遅れて入室し、大使を待たせる形となった。

 約20分間の面会後、程大使は記者団の取材に応じ、「釣魚島は中国固有の領土であり、中国の関連の船舶がこの海域で活動するのは当然のことだとの中国側の立場を説明した」と語った。その上で「外交チャネルの対話を通じ、解決に向けて努力していくべきと伝えた」と述べた。

 さらに程大使は「中国がエスカレートさせているという批判は当たらない」と記者団に主張。「当該海域は漁船の活動が増えていて、その関連の指導、事態の複雑化にならないよう中国側が努力をしていることを理解してもらいたい」と語った。

 尖閣諸島周辺では、5日から中国海警局の船の動きが活発化。数が徐々に増え、8日までに過去最多の15隻が同時に接続水域を航行したほか、日本が主張する領海への侵入も繰り返している。

 海上保安庁によると、9日は13隻が接続水域を航行。うち2隻が領海に入った。

 尖閣諸島をめぐっては、日本は領土問題は存在しないとの立場を取る一方、中国は領有権を主張している。

 
(久保信博 編集:山川薫)

[東京 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中