イタリア大手銀行モンテ・パスキ再建に早くも黄信号
7月31日、イタリア銀行大手モンテ・パスキ再建計画の2つの柱である大規模な増資と不良債権売却の先行きに、早くも黄信号が灯っている。写真は同行の支店。パリで3月撮影(2016年 ロイター/Mal Langsdon)
イタリア銀行大手モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)が29日に発表した再建計画は、同行の経営健全化だけでなく、イタリアや欧州全域に金融システム不安が波及するのを回避することなどを狙って大急ぎで取りまとめられた。しかし2つの柱である大規模な増資と不良債権売却の先行きに早くも黄信号が灯っている。
特に再建計画成功の鍵は総額50億ユーロに上る増資を年内に完了できるかどうかが握っているが、時価総額が10億ユーロ弱で、2014年以降に80億ユーロもの資金を新株発行で調達し、すぐに使い果たしたモンテ・パスキにとっては無理難題とも言える。
国際的な投資銀行が新株引き受けに仮合意しているとはいえ、その前提条件は大規模な証券化を通じた92億ユーロの不良債権売却が成功することだ。ただ、これほどの規模の証券化はイタリアでは過去に例がない。
何人かの銀行関係者やファンドマネジャーは既に、この計画がうまくいくかどうか疑問を投げかけている。
資産運用会社ハーミーズ・インベストメンツのクレジットアナリスト、フィリッポ・アロアッティ氏は「計画の2本柱にはともに崩れやすい要素がある。モンテ・パスキの過去の増資実績を踏まえれば、このような大掛かりな増資を完了するのは難しいだろう。また不良債権の証券化もとてつもない作業だ。実行に伴うリスクは著しく大きい」と述べた。
逆風の市場環境
JPモルガンと伊メディオバンカは、サンタンデール、ゴールドマン・サックス、シティ、クレディ・スイス、ドイツ銀行、バンク・オブ・アメリカとともに、引受団を形成することに暫定的に合意した。
だが少なくとも3行、インテーザ・サンパオロ、ウニクレディト、モルガン・スタンレーは引受団には加わらず、モンテ・パスキが十分な投資家の支持を得られるかどうか投資銀行業界にも懸念があることが浮き彫りになった。
さらに引受団に入った銀行も、売れ残った新株を保有するという最終的な約束をしたわけではない。