黒田緩和「検証」で枠組み転換の思惑、マイナス金利見直しも
新たな枠組みとは
「検証」後に新たな枠組みが導入されるとすれば、どのような選択肢がありえるのかー─。
白川氏が想定するのは、全く異なる金融市場調節方針の設定への移行。年間80兆円の保有国債の増加目標から、日銀保有国債の残高シェアにターゲットを変更する。
現状では日銀保有国債は市場残高の3割を占めるが、これを少しずつ引き上げていく仕組みだ。また、金利目標だけに的を絞ることもあるとみている。
同時に現行の2%の物価目標の柔軟化を図り、2%の物価水準あるいは達成期間の設定を取りやめる可能性もありえるとしている。
ただ、物価上昇への効果があるのかといった点や、マイナス金利をどこまで深掘りできるのかなど、詳細を詰めて実際のアクションを検討するには、時間がかかりそうだと白川氏はみている。
また、国債買入れが限界に近づいているとみられる中で、新たに国債に限らず政府保証債や地方債も買い入れる選択肢もささやかれる。
しかし、そこに踏み込むことの問題点も指摘されている。東京大学大学院の福田慎一教授は「これらの資産は、国債と比べて流通市場での売買高が少なく、流動性が低い資産。このため日銀の買い入れで市場価格が国債以上にゆがむ可能性が高い。価格が上方に大きくゆがめば、仮に日銀がその時点の市場価格で購入しても、いわゆるヘリコプターマネーに近くなると言えるかもれいない」と指摘する。
さらに「信用緩和政策」に踏み込む選択肢も指摘されている。SMBC日興証券・チーフエコノミストの丸山義正氏は、例えば社債の買い入れは、リーマンショック後の09年に企業の金融支援策として行われたが、今回は緩和強化の一環として実施される可能性があると見ている。
ただ、こちらも買入額が巨額になれば、ヘリコプターマネーに近いと福田教授はみている。