中国空海軍とも強化――習政権ジレンマの裏返し
アメリカを中心とした「一部の国」が、「中国の軍事力を軟弱なものと誤読した」ためにこのような権力を侵害する不当な判決が出たので、中国軍は今後、「決して軟弱ではない」ことを見せつけていかなければならないと強調している。つまり「バカにされないように」南シナ海における軍事力の威力を常態化させることが肝要だ、としているわけだ。
あの「戴旭」までが叫び始めた
中国人民解放軍・国防大学の教授を務める戴旭氏は、7月18日に開かれたネットシンポジウムで「南シナ海という中国の大門が閉ざされたら、中国は内陸国家になってしまう」という講演を行なった。
中国南海ネットオンライン開設式で開かれた「南海問題シンポジウム」でのことだ。
彼はさらに「中国は世論というプラットフォームで国内外の中国人と全地球上の中華民族の英知と力を結集して、アメリカと日本の陰謀をあばき、打撃を与えなければならない」と言った。
戴旭というのは、2014年1月1日に中国のネットで発表された「2013年度中国人クズランキング」で、堂々の4位にランクイン入りした人物だ(詳細は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』のp.77で詳述)。
ネットユーザーにバカにされ、中国政府からはナショナリズムを焚き付けすぎて困ると眉をひそめられている彼までが駆りだされたとなれば、これは国内世論的に、非常にまずい状況が来ていることを意味する。
追いつめられる習近平政権
これまで中国は、南シナ海に人工島を完成させるたびに、まるで戦争相手から島を奪い取ったかのごとく、「戦勝の歓喜」に沸いてきた。歌唱大会を開くなど、お祭り騒ぎだった。そのたびに「ほらね、中国共産党政権はすごいだろう?」と、求心力を高めるのに必死だったのである。
その「偉大なる中国の領土・領海」が、実は他人のもので、中国にはそれらを所有する法的根拠がないとなったら、どうなるだろう。
習近平政権は人民に対してメンツ丸つぶれなどという単純な言葉で表現できるレベルではない。そうでなくとも中共政府に不満を持つ中国人民が政府転覆に動くきっかけを作ろうとするかもしれない。
そのため、あまり過激に愛国主義を煽るわけにもいかないのである。排外デモが、反政府デモに転換していったら困る。その可能性は、胡錦濤政権における反日デモで、イヤというほど見て来た。だから、習近平政権になってからは、反日デモさえ行なわせないように徹底して抑えつけてきた。その分だけ売国政府と呼ばれないようにするために、対日強硬姿勢を取ってきたのである。