トランプはなぜ宗教保守派のペンスを選んだのか
石炭採掘は現在でもインディアナ州の重要な産業で、ペンスは「地球温暖化はただの俗説(myth)」と発言したこともある。
このように極めて右寄りと呼べる保守派のペンスを副大統領候補に選んだ最大の理由は、「トランプは保守の価値観を信じていない」という理由で彼への投票を嫌がる共和党員を説得するためだろう。
トランプ支持に消極的だったポール・ライアン下院議長は、「共和党の副大統領候補として、これ以上良い選択は考えられない」と評価した。
共和党を団結させるための「大人な選択」という見方もあるが、本選で勝つために有効なチョイスと言えるのだろうか?
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少なくともソーシャルメディアでは、ペンスを歓迎する共和党有権者の声は少ない。トランプ支持者の間では「退屈」という評価も目立つ。ペンスはインディアナ州の政策で「女性の敵」と見られているので、トランプの女性票を増やすことには貢献しないだろう。
ペンスの選択は、ある意味、共和党より民主党を喜ばせている。というのは、予備選で分裂した民主党を団結させるのには格好の人物だからだ。すでに、「LGBTの敵」「女性の敵」「環境保護の敵」とみなされているペンスが副大統領候補になったことで、ヒラリー嫌いのリベラルの間には危機感が生まれるだろう。もし仮にトランプが任期途中で大統領職を辞任した場合、副大統領が大統領職に昇格することになるからだ。
何よりも、予備選では現在の共和党の政策を無視した独自の信念がトランプの魅力だったはずだ。それを本選で変えることで、トランプは一部のファンを失うリスクがある。実際に、ツイートでは「ティーパーティなんかくそくらえだ! 共和党のこの部分が嫌いだからアメリカはあんたに票を投じんだぞ。トランプ、ペンス知事を捨てろ。でないと落選だ(Screw the damn Tea Party! We HATE that part of the GOP, that's why America voted for U @realDonaldTrump !RENOUNCE @GovPenceIN as VP or lose)」という意見も あった。
筆者は当初から、トランプが本気で大統領職を遂行する意思があるのか疑問だったが、副大統領候補の選択にもその迷いがあらわれているように思われてならない。