最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

トランプはなぜ宗教保守派のペンスを選んだのか

2016年7月19日(火)18時45分
渡辺由佳里(エッセイスト)

John Sommers II-REUTERS

<強硬な保守派として知られるインディアナ州知事のペンスを副大統領候補に選んだトランプ。その目的は保守票の獲得だが、共和党支持層からの反応は良くない>(トランプ〔右〕は副大統領候補にペンス〔左〕を選んだことを発表した)

 共和党大会開始を2日後に控えた16日、トランプが副大統領候補にインディアナ州知事のマイク・ペンスを選んだことを発表した。

 ほかにも最終候補として名前があがっていたのは、ニュージャージー州知事のクリス・クリスティと元下院議長のニュート・ギングリッチだった。クリスティは予備選を脱落して以来、忠実にトランプのキャンペーンを支援してきたが、知名度と人脈ではギングリッチほどのインパクトはない。つい最近まで、この2人のどちらかだろうと見られていた。

 ところがトランプは、知名度がほとんどなく、インディアナ州の予備選ではライバルのテッド・クルーズを支持したペンスを選んだ。トランプの直感的なチョイスはギングリッチかクリスティだったようだが、トランプが唯一耳を傾ける娘のイヴァンカと息子のエリックがペンスを選ぶように説得したと言われている。

 アメリカでもあまり知られていないペンスとはどんな人物なのか?

【参考記事】ようやくヒラリーを受け入れ始めたサンダース支持者

 大学時代にキリスト教保守派になったペンスは、自分のアイデンティティについて「まずキリスト教徒、次に保守主義者、最後に共和党員」と述べている。

 ペンスが知事を務めるインディアナ州そのものが、非常に保守的な地域だ。北西部の近隣には、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン、イリノイという州がある。だが、その中でもインディアナは最も平均収入が低く、大学卒業者が少なく、キリスト教福音派が多く(イリノイの13%に比べ、倍の26%)、10代の妊娠と離婚が最も多い。

 ペンスの政治もこの地と彼の宗教観を反映したもので、「同性婚禁止」「中絶違法化」に積極的な右寄りの保守派だ。昨年には企業や組織が宗教的信念を理由にゲイ、レズビアン、トランスジェンダーなどへのサービスを拒否し、差別を正当化できる「Religious Freedom Restoration Act(宗教の自由復活法)」という法律に署名して発効させた。

 また婦人科クリニックを運営するNPO団体「Planned Parenthood」への予算をカットし、その結果、低所得者が性病の検査を受けられるクリニックが閉鎖され、クリニックが閉鎖された地域ではHIV感染者が激増した。この感染拡大の裏には、「Opana」というドラッグで依存者が注射針を使い回しした事実がある。ペンスは、感染を防ぐために新しい注射針を無料提供する「needle exchange」というプログラムに反対して、感染が広がった時にインディアナ州ではこのプログラムが禁止されていたことが指摘されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中