最新記事

領土問題

南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱

2016年7月9日(土)19時28分

 とはいえ、中国は、南シナ海の大半において同国が議論の余地のない、歴史的権利と主権を有しているため、今回の問題はUNCLOSやハーグ裁判所の権限を超えていると主張している。

 中国は、いわゆる「九段線」を基準に自国の領有権を主張する。それは、第2次世界大戦で日本が敗戦した後で、地図上に引かれた、境界があいまいなU字型の破線だ。

 フィリピンが訴えた15項目では、中国の主張する領有権と、豊かな漁場であり、エネルギー資源の宝庫でもある7つの岩礁における同国の埋め立て工事の正当性に異議を唱えている。

 また、フィリピンは、UNCLOSで認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)で開発を行う自国の権利保障を求めている。

 フィリピン政府の弁護士チームに近い関係者は、海上における中国の今後の行動に大きな圧力をかけるに足る、十分な項目において有利な裁定を得ることができるだろうと自信をのぞかせる。

 昨年11月にフィリピンが法廷で展開した主張の多くは、難解な法律用語で表現されていたが、中国が建築を進める工事の規模を強調するため、弁護士チームは1つのスライドショーを用いた。

 それには、オランダ首都アムステルダムにある広大なスキポール空港が、中国が南沙(英語名スプラトリー)諸島のスビ礁に設置した新たな滑走路にぴったり重ね合せられていた。

「裁判官が全員スキポールを利用していたことを知っていた」とフィリピン政府の弁護士チームに近い関係者は話す。「彼らには真意が伝わったと思う」

統一行動はできるか

 裁定を控え、英国やオーストラリア、日本などの国々は、米政府ともに、航行の自由や法の秩序を尊重することの重要性を強調している。

 米国は東南アジア諸国にも、この問題で統一戦線を張るよう働きかけているが、まだ成果は上がっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中