南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱
とはいえ、中国は、南シナ海の大半において同国が議論の余地のない、歴史的権利と主権を有しているため、今回の問題はUNCLOSやハーグ裁判所の権限を超えていると主張している。
中国は、いわゆる「九段線」を基準に自国の領有権を主張する。それは、第2次世界大戦で日本が敗戦した後で、地図上に引かれた、境界があいまいなU字型の破線だ。
フィリピンが訴えた15項目では、中国の主張する領有権と、豊かな漁場であり、エネルギー資源の宝庫でもある7つの岩礁における同国の埋め立て工事の正当性に異議を唱えている。
また、フィリピンは、UNCLOSで認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)で開発を行う自国の権利保障を求めている。
フィリピン政府の弁護士チームに近い関係者は、海上における中国の今後の行動に大きな圧力をかけるに足る、十分な項目において有利な裁定を得ることができるだろうと自信をのぞかせる。
昨年11月にフィリピンが法廷で展開した主張の多くは、難解な法律用語で表現されていたが、中国が建築を進める工事の規模を強調するため、弁護士チームは1つのスライドショーを用いた。
それには、オランダ首都アムステルダムにある広大なスキポール空港が、中国が南沙(英語名スプラトリー)諸島のスビ礁に設置した新たな滑走路にぴったり重ね合せられていた。
「裁判官が全員スキポールを利用していたことを知っていた」とフィリピン政府の弁護士チームに近い関係者は話す。「彼らには真意が伝わったと思う」
統一行動はできるか
裁定を控え、英国やオーストラリア、日本などの国々は、米政府ともに、航行の自由や法の秩序を尊重することの重要性を強調している。
米国は東南アジア諸国にも、この問題で統一戦線を張るよう働きかけているが、まだ成果は上がっていない。