南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱
中国は、米国に対して自国の領土と政治的な主権を守るための問題として認識している。
また、南シナ海で領有権を主張する他の国々は、米国を味方に付けていると感じることで勇気づけられ、中国に挑んでいると劉大使は語る。
「これらの国々は、米国が(味方に)いることで、中国との状況を好転できると感じている。私は米国の動機について非常に疑わしく思う」
差し迫る裁定を一蹴する中国だが、自らの主張を広めるための国際的なプロモーション活動も怠らない。
外交官やジャーナリストと会合を持ち、世界各地での論説や学術論文において、自国の主張を説いている。
「フィリピン政府の主張には正当な根拠がない」。チャイナデイリーのニュージーランド創刊号に掲載された記事にはそう書かれていた。
中国の外交官は常に、そして、あらゆるレベルでこの問題を提起しているとアジアと西側諸国の外交官は指摘する。
「それは執拗なものだ。こんなことは何年も目にしたことがない」とアジアに拠点を置く西側の公使は語る。
中国は、このような領有権問題は国際仲裁ではなく、二国間協議によって解決されるべきとの同国の主張を40カ国以上が支持していると述べているが、公の場で中国への支持を表明した国はほんの一握りだ。
今回の裁定は、単に南シナ海の領有権にとどまらず、中国の台頭がもたらす、より広範な米中の緊張関係を物語ることになる、と中国と西側双方のアナリストは指摘する。
「これは、米国の優位性の衰退を露呈するものだ」と香港にある嶺南大学で中国安全保障問題を専門とする張宝輝氏は語る。「中国の行動に指図はできないと米国に示すことで、中国は自らの評判を高めることができる」
中国とフィリピンの主張
フィリピンが自らの主張の拠り所にしているUNCLOSは、島や岩礁などのさまざまな地理的な特徴から、どのような領有権を主張できるかを規定している。中国はこの条約の調印国であり、これは同国が国連に加盟後、最初に合意した国際条約のうちの1つだ。