南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱
仲裁裁判所に自国の主張を伝え、独自提訴の可能性も排除しないベトナムは1日、仲裁裁判所が「公平で客観的」な裁定を下すことを求めた。
主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)は、中国の反対があったとしても、裁定は拘束力を持つべきだと述べている。ベトナムは、裁定を支持するとの見解を裁判所に提出した。
法律の専門家は、裁定は技術的に拘束力があるとはいえ、UNCLOSの裁定を執行する機関が存在しないと指摘する。
また、アジアの軍や政府当局者の間では、いかなる裁定が下されたとしても、中国は新たな軍事行動や工事増強によって自身の主張を強調しようとするのではないかとの懸念が強まっている。
中国は、南沙諸島の新たな施設で戦闘機やミサイルを配備したり、防空識別圏の設定、あるいはフィリピンとともに実効支配する浅瀬で新たな埋め立て工事を開始したりする可能性があると米国やアジア域内の軍事当局者は指摘する。
岩礁は中国の領土であり、米国の挑発に対抗するため自国領土に「自己防衛」設備を設ける権利があると中国は主張している。
中国がフィリピンに近いスカボロー礁付近でも、岩礁の上に建造物を設置して恒久的な海上プレゼンスを確保するのではないかと、米当局者は神経を尖らせている。
中国の劉大使は、南シナ海ではさまざまな民間設備が完成もしくは建造中だと述べた。同大使は、軍事施設も建造中だと認めている。
「中国はなぜ軍事施設を建造してるのかとの質問を受けたが、それは米国に問うべきだ。彼らがわれわれを脅かしてきた。われわれが脅かしているのではない。彼らはすぐ近くにいるのだ」
マレーシアとベトナム、ブルネイ、台湾が領有権を主張する海域で、米国は自らの軍事プレゼンスを高めてきた。フランスは欧州諸国も南シナ海における共同パトロールに参加するよう提案している。
米国の取り得る対応としては、軍艦による航行の自由作戦の強化や、軍用機による領空通過、もしくは東南アジア諸国に対する防衛協力の強化などが含まれる、と米当局者は匿名を条件に語った。
中国は領有権問題を二国間協議で解決することを望んでいると劉大使は語る。「これらの国と戦争はしないし、戦いを望んでいない。それでも、われわれは、島々の主権を主張する」
(Greg Torode記者, Mike Collett-White記者、翻訳:高橋浩祐 編集:下郡美紀)