【写真特集】アメリカ国境に広がる過酷で非情な世界
壁(2015年) アメリカ・メキシコ国境に次々と築かれる壁は、不法移民の防止にはあまり役立っていない(米アリゾナ州ノガレス東部)
アメリカとメキシコとの国境に壁を造れ。費用はメキシコに負担させろ――。米大統領選の共和党候補者指名レースで首位を走るドナルド・トランプの暴言で、国境と不法移民の問題が今また注目を集めている。
カリフォルニア生まれの写真家リチャード・ミズラックは04年から、3141キロに及ぶメキシコ国境地帯を撮影し続けてきた。時に大判カメラ、時にiPhoneを使い、国境フェンスのある風景や不法移民の持ち物の残骸、周辺の過酷な環境などを写し出し、写真集『ボーダー・カントス』にまとめた。
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ミズラックはこの写真集でメキシコ出身の作曲家ギレルモ・ガリンドとの一風変わったコラボレーションも試みている。国境付近で手に入れた衣服やボトル、タイヤなど、移民や国境警備隊が残したがらくたで、ガリンドが楽器を制作。そこから生み出される独特の音色によって、視覚と聴覚の両面で国境を表現しようという狙いだ。
写真と音楽から見え、聞こえてくるのは、移民と国境管理という重大な国際問題だ。荒涼とした国境地帯を写し出した試みは、トランプのわめき声以上に現実を雄弁に語る。
かかし(2009年)
カリフォルニア州ジャカンバ近くにはボロボロの服をまとった多数の整地用タイヤ(2013〜15年) 人形が。脅しか、抵抗のシンボルか
国境警備隊の射撃訓練の標的(2013年)
メキシコ湾に近いテキサス州のボカチカの青空の下に並ぶ人型の的。訓練の薬莢が散乱する
整地用タイヤ(2013〜15年)
国境の至る所に残る国境警備隊のタイヤ。引きずって地面をならし、新たな侵入の痕跡を発見しやすくする