EU離脱によるポンド安でイギリス企業M&Aに好機到来、夏場以降に件数増加か
7月24日、法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズのUKコーポレート部門責任者、ベン・ワード氏は「買収機会であることは明白だ」と指摘した。写真はマンチェスターで3月撮影(2016年 ロイター/Phil Noble)
英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けたポンド安を機に、英国企業を割安で買収しようと機会を探る外国企業が目立っている。トムソン・ロイターのデータによると、6月23日の国民投票以降、外国企業による英国企業の買収案件は約60件、買収総額は345億ドルに達した。
これは国民投票までの1カ間と比べると、案件数こそ79件から減ったものの、買収総額は43億ドルから大幅に拡大した。ソフトバンク<9984.T>による英半導体設計ARMホールディングスの買収(320億ドル)が大きな割合を占めた格好だ。
英国がEU離脱を決めれば、国内経済やEU単一市場へのアクセスをめぐる不透明感からM&A(合併・買収)が一定期間枯渇するのではないかとの見方があったものの、ひとまずは否定されたといえる。
英国企業に関心を持つ外国企業の事情に詳しい複数のバンカーによると、夏場を過ぎれば英国企業の買収が増える可能性もあるという。
ソフトバンクによるARM買収について、英国政府は同国経済の底堅さを示すものだと指摘。しかし、M&Aを専門とするバンカーによると、国民投票後の買収案件のうちいくつかは、英国経済に対する強気の見方というよりも為替レート要因で英国企業に比較的割安感が出たことのほうが要因としては大きいという。ポンドは国民投票後に31年ぶりの安値を付けた。
法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズのUKコーポレート部門責任者、ベン・ワード氏は「買収機会であることは明白だ」と指摘。「ドル、人民元、円という強い通貨圏の人々は間違いなく健全なポンド建て資産の獲得に関心を抱くだろう」と述べた。
国民投票以降の買収案件にはこのほか、南アフリカの小売り大手シュタインホフ・インターナショナルが英格安小売りのポンドランドを約6億ポンドで買収合意した案件などがあった。