悪臭放つアフリカ連合(AU)も解体せよ
Francois Lenoir-REUTERS
<形だけEUをまねたアフリカ連合(AU)は大失敗で、設立以来15年、何一つ達成していない。ならず者国家も破綻国家も加盟し放題、加盟国で戦争犯罪や不正選挙があっても内政「不干渉」、そして「1マイルの道路も作らなった」という非効率。イギリスの離脱でEUが再出発を求められている今、AUも作り直す必要がある> (写真右は、2010年、リビアのトリポリで第3回EU・アフリカ首脳会議を主催したカダフィ)
イギリスのEU離脱は、EUとイギリスばかりでなく、アフリカにとっても新しい始まりだ。
アフリカ大陸の国々は大半が1960~1970年代に独立したばかりなので、これれまでひたすら西欧の政治制度をまねてきた。バチカンにサンピエトロ大聖堂があれば、コートジボワールの首都ヤムスクロにはそれより大きいバシリカ大聖堂が建つ。フランスに皇帝がいたと聞けば、ジャン・ベデル・ボカサのように2500万ドルをかけて即位式を行い中央アフリカ帝国皇帝になった者もいる。アメリカに宇宙センターがあるなら、ナイジェリアにも作る。人口の半分以上が1日1.25ドルで生活している国が、宇宙センターに8900万ドルを費やした。アフリカ大陸を覆う「輸入品」の残骸のなかでも、いちばんひどい悪臭を放っているのがEUをまねたAU(アフリカ連合)だ。
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少なくとも世界経済危機の頃から、そしてイギリスがEU離脱を決めた国民投票の後はとくに、EUはヨーロッパのために機能し得ないことがはっきりした。アフリカの指導者も、EUをまねただけの虚飾の塊がアフリカのためにならないことを認めるべきだ。
アフリカ大統領になろうとしたカダフィ
AUは2001年に設立された。植民地時代以来の初の汎アフリカ機関だったOAU(アフリカ統一機構)の後を継いだ。AUを構想したのはリビアのムアマル・カダフィ将軍(当時)だ。自らを「王の中の王」と称していたぐらいだから、アフリカ合衆国の最初の大統領になろうという妄想を抱いていたとしてもおかしくはない。新組織の目標は、国際社会に対してアフリカが統一戦線を張ることと、大陸の開発をスピードアップすることだ。だがAUは組織設計のまずさから最初から躓いた。権力が集中しているのに求心力は弱く、組織として機能しなかったのだ。
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AUの意思決定権はAU委員会に集中している。AU委員会は、EU委員会に相当する行政組織で、政策を提案し、AU議会などの決定を執行する。AU委員会は予算も管理し、加盟国はその政策提案に対して何の影響力もない。54カ国と2000以上の民族が集まる大組織のなかでは、中央に権力が集まり過ぎていた。AU委員会の力はほとんど疑惑や陰謀を生み出すだけで、最後は加盟国の抵抗に合った。
誰にでも加盟を許したのも勘違いだった。EUに加盟するためには厳しい政治的経済的条件を満たさなければならないが、AUには、どんな「ならず者国家」も破綻国家も入ることができた。実際、出資金の滞納で前身のOAUを追放されるべきだった18カ国も、カダフィが滞納分を立て替えて加盟させていた。AUはまた加盟国の内政には不干渉を貫いている。戦争犯罪や人権侵害を犯した政府を怖がらせないようにするためだ。その結果今では、モロッコを除くすべてのアフリカ諸国がAUのメンバーになっている。