イギリス国民投票、離脱派はマイノリティー市民取り込みに苦戦
6月22日、英国のEU離脱陣営はマイノリティーの説得に苦慮している。写真はイスラム教徒の女性。ロンドンで3月撮影(2016年 ロイター/Stefan Wermuth)
英国のアジア系やアフリカ系など少数派(マイノリティー)市民の間では、欧州連合(EU)残留を支持する傾向が強い。殺害された残留派議員への共感や、離脱派陣営のポスターに対する反感も残留派の追い風となり、離脱陣営は少数派の説得に苦慮している。
人種的マイノリティーの公式な定義はないが、2011年の国勢調査ではイングランドとウェールズの人々の14%が自身を非白人と認識し、20%近くは白人系英国人ではないと答えている。23日の国民投票を控えて残留派と離脱派が拮抗する中、結果を左右し得る勢力だ。
離脱陣営はこれまで、少数派市民が抱くEUの移民政策に対する懸念に訴えかけてきた。アジア系市民の多くはルーツである旧英植民地から家族を呼び寄せており、EU域外からの移民に適用される査証規則がその障害になっているとの不満を抱く者もいる。EUを離脱すれば、呼び寄せるのはもっと簡単になる、というのが離脱陣営の主張だ。
しかし難民受け入れに理解を示していた残留派の女性下院議員、ジョー・コックス氏が殺害されて以来、少数派市民の中には離脱派を支持することを考え直す者も出てきた。
離脱派の英独立党のファラージ党首が公表したポスターも、少数派市民による離脱派支持に水を差した。ポスターは行列をつくる難民の写真を背景に「(移民受け入れは)限界点だ」とのメッセージを掲げている。
ロンドン東部のモスクにいた女性(33)は「彼女(コックス議員)のような人が残留すべきだと言っているのなら、それが正しい決断だと思うようになった。あんなポスターやファラージュみたいな連中を見ると考えてしまう。『彼らは何を変えるのだろう。黒人や少数人種にとって状況は悪くなりそう。残留した方が安全そうだ』と」と語った。
人口動態も影響か
人種別の内訳を示した世論調査を見ると、少数派市民では過半数がEU残留を支持しており、離脱支持は25%から33%程度となっている。