ワンピース、キャプ翼、テトリス、辞書まで映画化!? 中国第3のバブルの実態
先日、人気マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』の実写映画化のプレスリリースが流れ、ちょっとした騒ぎとなった。今の中国ならば実現しかねないとも思わせる話だが、ただちに出版元の集英社が否定し、虚偽のニュースであることが明らかになっている。記載されていた電話番号は別人のもの、メールアドレスは存在しないというお粗末な偽プレスリリースだったが、上述のような怪しげなブローカーが跋扈していることを考えると、あるいはたんなるイタズラではなく、背後には怪しげな話が存在していたのではないか......とも想像させられる。
世界一のゲーム市場、世界2位の映画市場
中国のIPブームは日本のコンテンツ業界にどのような影響をもたらしているのか。最前線の現場に立つ株式会社アクセスブライトの柏口之宏社長に話を聞いた。
同社は日本のコンテンツの中国展開をサポートするベンチャー企業で、2011年の創業以来、実績を積み重ねてきた。
スマホゲーム「ロボットガールズZ」は今年2月、iPhone向けアプリ配信プラットフォームApp Storeの中国版で有料アプリランキング1位を獲得。5月には『クレヨンしんちゃん』のスマホゲームを中国でリリースし、今後も「ハローキティ」『AKB0048』などのスマホゲームのリリースがひかえている。いずれもアクセスブライトが手掛けたものだ。
また、同社は昨年11月に中国最大の映画・テレビ番組制作企業の「光線媒体」(エンライト)と資本提携し、ゲームのみならず映像の分野にも進出した。上述した『ブラック・ジャック』の中国進出にもかかわっている。
「シュリンクが続いていた日本市場にとって、中国市場という光明が見えた。これはすばらしいことです」と柏口社長は語る。中国はすでに世界一のゲーム市場、2017年には映画でも米国を抜き世界一になる見通しだ。この巨大市場が日本のすぐ隣にあることは、コンテンツ業界にとってはなによりの福音であり、米国やヨーロッパ以上に重要な市場だと指摘する。
中国の景気減速が伝えられているだけに、コンテンツ市場も急ブレーキがかかるのではとの不安もあるが、エンターテインメント業界の成長はむしろ今後本格化すると、柏口社長は期待を示した。「エンタメの急成長というのは、いわゆるバブルの少し後に来るんです。私は1991年にセガに入社したのでよくわかっています。外車や高級時計が買えなくなると、安い娯楽に流れていくんです」
しかし、巨大市場の成長という光の裏側には影も存在していると、柏口社長は警鐘を鳴らす。代表的な問題としてあげたのが以下の2例だ。
第一に、株価上昇を狙ったIP獲得。映画やゲームを作って稼ぐのではなく、IPという資産を獲得したという事実で自社株を上げることだけを目的にしている。そして第二に、みかじめ料目的のIP獲得。ゲーム化権を取得したことをたてに、すでにサービスを行っている海賊版ゲーム企業から利益の一部を取り立てることで稼いでいる。