「次のインターネット」、噂のブロックチェーンって何?
個人間の国際送金の方法を変える可能性があるのはアブラ社だ。配車サービスのウーバーのように、仮想の銀行窓口として登録した人とユーザーの間で直接取引を行う。
フィリピンにいる母親へアメリカから送金したいユーザーなら、まず専用アプリで最寄りの「窓口係」を見つけ、その人物に直接会って現金や小切手を渡す。窓口係は同じ金額をアブラのブロックチェーン・システムに入金する。フィリピンにいる母親も同じように現地の窓口係を探して会い、現地通貨でお金を受け取る。窓口係の信用を担保できる限り、銀行を通すよりも手数料は少なくて済むし、時間もかからない。
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SNSも様変わりする
今後もさらに多くの使い方が生まれる見通しだ。ウーバーのブロックチェーン版が登場すれば、運転手は自分で利用者とやりとりし、料金を自動的に回収できる。仲介者を省くことで高い手数料も払わずに済む。これが実現すれば、ウーバーに登録する運転手はいなくなるだろう。
フェイスブックのビジネスモデルも揺らぐだろう、とタプスコットは言う。フェイスブックという企業の価値は、利用者が無料で提供している膨大な個人情報の質と量で決まる。だがブロックチェーン技術を使えば、ソーシャル・ネットワークに参加しながらも個人情報をすべてデジタル金庫に保管しておくことが可能になる。
その場合、フェイスブックが私たちのデータを入手したければ、私たちから買わなければならなくなる。広告収入に依存するフェイスブックにとって、これは大きな痛手だろう。
ブロックチェーンで世の中がどう変わるかを、現時点で予想するのは難しい。今はまだ相当なコンピューターの知識がないと使いこなせないが、それも遠からず変わるだろう。TCP/IPやHTMLの知識がなくてもインターネットを使えるのと同じことだ。いずれはブロックチェーンを使ったさまざまなアプリが登場し、私たちが気軽に使えるようになる。
そしてたぶん、今どこかで遊んでいる9歳児の中から、ブロックチェーンの新たな可能性に気付く「次代のザッカーバーグ」が生まれることだろう。
[2016年6月14日号掲載]